エルダー2021年6月号
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エルダー61急速に進んだ在宅ワークの問題点場所や時間にとらわれずに働く「テレワーク」には、職場から離れたサテライトオフィス勤務や移動中の列車内、カフェ、出張先や宿泊先でのモバイル勤務以外に、コロナ禍で特に注目されるようになった在宅ワークが含まれます。新型コロナウイルス感染症の流行にともなう緊急事態宣言の発令がくり返され、行政からの要請に応じるために、本来は十分な準備とていねいな支援を前提とすべき在宅ワークが、課題の整理や改善策がなされないまま一気に進んでしまいました。そのために、在宅ワークで働く人のメンタルヘルスに影響するさまざまな問題が生じることがあります。読者のみなさんの職場でそうした問題が発生していないか、図表1(次頁)の項目をチェックしてみてください。在宅ワークによるメンタルヘルスへの影響図表1のリストでチェックを入れた項目があれば、在宅ワークによる働く人へのメンタルヘルスへの影響をさらに分析するために、● 個別の問題に限定されるのか?● 事業場全体におよぶ傾向なのか?● 新たに発生した問題なのか?● 以前から存在していた問題が顕著化、深刻化したものか?といった点について、関係部署で検討してみることをおすすめします。マネジメントの力を疑われた管理職が自己嫌悪や課題を回避したいという気持ちを抱くようになったり、業務評価への不満から職場全体の雰囲気が悪化したりするケースもあります。在宅ワークにともなうメンタルヘルス不調の事例としては、周囲への気遣いが過剰な人、不安感が強すぎる人などの状態が不安定になったケースや、メンタルヘルス不調の既往のある人が在宅ワークを契機として、疎外感を強め、抑うつ状態が再燃した例もあります。在宅ワークを含むテレワークの問題に付随して、次のような要因の有無や良否が、働く人の心身の健康に影響するとも指摘されています。①マネジメントを行う上司への支援② 在宅勤務環境の整備や経済的な面などの支援③同僚たちによる(お互いの)支援④仕事以外の社会的なつながりの有無⑤仕事と家庭の葛藤の程度  コロナ禍で変わる職場と働き方株式会社健康企業 代表・医師 亀田高志在宅ワークとメンタルヘルス第2回 コロナ禍によって、在宅ワークを行う人が流行前に比べて格段に増加しました。働き方や環境面の変化が避けられませんが、新型コロナウイルス感染症の流行拡大による導入で、十分な準備や整備ができなかった職場も少なくありません。在宅ワークで影響を受ける働く人のメンタルヘルスに関する配慮と対策に目を向ける必要があります。短期連載

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