エルダー2021年6月号
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2021.662て片づけられてきた面があります。しかし、職場の仲間がメンタルヘルス不調になって、勤怠が乱れたり、仕事のうえで支障を生じたりするようになれば、個人的な問題として片づけてしまうわけにはいかないでしょう。この点は健康相談として産業医などに対応を依頼し、衛生委員会でも周知することができます。自職場で①から③にあげた支援が不十分であるならば、事業場のトップにこれを上申することや(安全)衛生委員会で問題提起を行うこと、実施が期待されるストレスチェックの集団分析結果に基づく職場環境改善活動などの場で話し合う話題に加えることもできます。④や⑤はこれまで働く人の個人的な問題とし在宅ワークによるメンタルヘルス面の影響を最小化する対策在宅ワークにおけるメンタルヘルス対策には、従来の対策を充実させることと、新しい対策を導入するという二つの側面が必須です。従来からの対策に関しては、厚生労働省が進めてきたメンタルヘルス対策を計画的に、そして継続的に実施できていることが大切です。図表1  メンタルヘルスに影響しうる在宅ワークにともなう問題のチェックリスト番号具体的な内容例(順不同)自職場にあてはまればチェック1職種や部署によって在宅ワークが認められるかどうか、という違いから感情的な不公平感を生じた。2在宅ワークをしている人ではなく、出勤した人に問合せへの対応などの負荷が高まった。3同業他社などと比べて、自職場の在宅ワーク、時差出勤などの勤務形態への不満が生じた。4住居や住環境、家族構成によって在宅ワークでの業務遂行に困難が生じた。5オンラインでの会議で情報共有や会議進行などに不都合を生じ、以前のように議論が進まない、という不満が出た。6オンラインの会議では前後の雑談や情報交換ができず、意思疎通が図りにくい、という意見がある。7画面越しでお互いの様子がわかりにくく、コミュニケーションが取りづらい、という意見が出た。8上司や同僚とのコミュニケーションが不十分だと感じて、自らの仕事への評価に関する不安が高まっている。9通勤がなくなったことで、行き帰りの気分転換ができないことによるストレスを口にしている。10上司とのコミュニケーション機会の減少により、担当業務の進捗が遅れ、結果として労働時間が増加した同僚がいる。11管理職ごとのマネジメントの能力の差が明らかになっていると感じている。12管理監督者にとって、部下の業務評価がしづらい、という意見が出ている。13部下の人たちの間で、管理職による業務評価に対する不満が高まったと感じている。14業務に関する指示や報告が時間帯にかかわらず行われやすく、仕事と生活の時間の区別が曖昧になり、長時間労働が生じている。15在宅ワークにともない飲酒量が増加した、あるいはそうしたことを訴える同僚がいる。16在宅ワークのために運動不足によって心身の不調感をより強く感じる、あるいはそうしたことを訴える同僚がいる。17在宅ワークのために生活習慣のリズムやメリハリがつきにくくなる傾向があると感じる。※参考資料1より筆者が作成三段階の予防対策● 一次予防=不調の未然防止● 二次予防=早期発見・早期介入● 三次予防=不調者の職場復帰支援四つのケアの実施● セルフケア(労働者自身が行う)● ラインによるケア(管理監督者による)● 事業場内資源によるケア(産業医等)● 事業場外資源によるケア(外部精神科、メンタルヘルス相談機関など)心の健康づくり計画の策定と実施● 安全衛生トップの方針表明を起点に心の健康づくり計画を策定し、衛生委員会でさまざまな課題を調査審議しながら、進捗管理や評価を行うことが求められています

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