エルダー2021年8月号
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特集生涯現役時代の“学び”を考えるエルダー13週1回、茨城大学の水戸キャンパスに通い、1コマ120分の講義を受ける。聴講する講義は各々で選択できるが、仕事に役立てたいとの思いから経済、経営分野が多い。一人一つの講座の受講が可能で、複数の受講は本業がおざなりになる可能性を考慮し、推奨はしていない。もとよりサザコーヒーは茨城大学に「サザコーヒー茨城大学ライブラリーカフェ店」、筑波大学に「サザコーヒー筑波大学アリアンサ店」という、大学の敷地内にあって学生や教職員以外の一般客も利用できるカフェを出店しており、地域貢献を目ざす大学とのコラボレーションを行ってきた。鈴木会長自身がコーヒー、フード、喫茶店経営など事業に関する多くを文献から学びとり、社会人としての学習を実践しており、コーヒーの歴史にも精通。茨城大学が北茨城市の五い浦ずら地域にゆかりのある美術思想家・岡倉天心を取り上げたシンポジウムを開催するにあたり、鈴木会長が文献を調査し、岡倉天心がボストンに渡った20世紀初頭におけるアメリカの流通状況から当時流通していたコーヒーを割り出して再現。さらに大学と共同開発を行い、「五浦コヒー」として商品化した。五浦コーヒーはブラジルとコロンビア品種をブレンドした浅煎りシティローストコーヒーで、大学の土産品として、また記念品として人気がある。一方、茨城大学社会連携センターが行っている「茨城大学リカレント教育プログラム」は、企業の人材育成を支援し、地域貢献につなげることをねらいとし、2019年4月から本格的に開始した社会人向けに講義を開放する取組みである。経済学や工学など企業の事業活動に直接役立つような専門科目だけでなく、歴史・文化などの一般教養科目を幅広く開放。2020年からは企業の要望に応え、提供可能な科目数を増やす対応を行った。プログラムのコースは、「オープンコース」、「専門コース」、「カスタムコース」の3種類が用意されている。「オープンコース」は市民がだれでも参加できる公開講座、公開授業で、1科目単位から自由に選び、学ぶことができる。「専門コース」はさまざまな専門分野から体系的に効率よく授業を受けることができ、個人、企業など団体のどちらにも対応している。「カスタムコース」は企業や団体の要望に応じて従業員育成プログラムをカスタマイズして提供するというもの。このコースは同大学独自の取組みで、全国でも珍しく、まだ参加していない企業・団体からも引き合いが強まっているようだ。サザコーヒーは大学からの提案を受け、カスタムコースに参加している。鈴木会長は、地元のひたちなか商工会議所会頭を務めていることから、地域では顔が広く茨城大学との交流もあった。こうしたつながりから提案されたわけだが、同社は店頭で提供する果物や野菜などはできるかぎり茨城県産を使用し、地域のイベントでは無料でコーヒーを配るなど地域活性化に取り組んできた。同プログラムへの参加を決めたのは、茨城大学が掲げる地域企業の人材育成を支援し、地域貢献を図るという趣旨に賛同したところが大きい。「今期講義を受けている8人のうち大学を卒業した者は1人ですので、ほぼ全員が初めて大学で学ぶことになります。この経験そのものがよい刺激になっていると思います。受講者はみんな活き活きしていますよ。どんな講義を選ぶかも参加している社員の自由です。これまでに、業務にまったく関係のない哲学の講座を選択した社員もいましたがかまいません。新しいことを学ぶことは自分の弱点を克服することだと考えています。社員にはコンプレックスをバネにし、よいところを伸ばしていってほしい。商社のような特性がある当社では、多種多様な人材育成が必要ですから、多様な人材の特長を引き出すためにも、社員が大学で学ぶ意義はあると思います」(鈴木会長)「コーヒーは舌で味わい、頭で理解して飲む

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