エルダー2021年8月号
19/68

特集生涯現役時代の“学び”を考えるエルダー17社員のニーズの高さをあらためて感じました」と、人事本部タレント・ディベロプメントチームスペシャリストのファムティホイ フンさんは話す。また、「『キャリア越境学習プログラム』に参加した社員に持ち帰ってもらいたい成果として四つのことを期待しました。一つ目は自身の親しんでいる場所から視点を変えてビジネスをとらえてみる『視野の拡大』。二つ目は自分がいままでつちかってきたスキルがどこまで活用できるかを試みる『ポータブルスキルの活用』。三つ目は『ダイバーシティの実践』。四つ目は、スモールビジネス※の経営に直接触れることによる『視座の向上』です」とねらいをふり返る。プログラム自体は3日間だが、この間に約2週間のインターバルを設けることから実施期間は2カ月にも及んだ。外部のパートナー企業の講師がプログラムをリードしてくれたこともあり、参加者からは「これまでの研修のなかで最も面白かった」という声も聞こえてきたという。プログラムの設計において特に慎重に検討したのは、越境先の選定だった。今回が初めての試みということで、同社とまったく関連性のない企業では社員のモチベーションが上がりにくく、スキルを応用しにくいのではと考え、比較的関連性の高いヘルステクノロジー系ベンチャー企業2社を選出した。また、経営者とは事前にていねいに話し合い、準備を重ねていった。3日間の研修内容は、初日はベンチャー企業の仕組みや、スモールビジネスに関するレクチャーを実施し、後半には経営者たちから企業が抱える課題と提案内容に対する期待値をヒアリングした。2~3週間のインターバルの後、越境先企業を訪れ、再度ヒアリングを実施し、3日目は越境先企業へのプレゼンテーションで、運営体制や環境も含めて提案するというのがプログラムの全容だ。「当時は越境という考え方やプログラム自体もないのが現状で、パートナー企業の講師のネットワークの力を借りてベンチャー企業2社を選定しました。経営者は非常にパワフルで、自分の会社に対してパッションを持っていました。『キャリア越境プログラム』を通じて、越境先の企業が日常のなかでは考えにくい課題を、違う視点で一緒に考える仲間を求めているという互いのニーズがマッチし、2社が決まりました」とファムさんの笑顔がこぼれた。2019年に『キャリア越境学習プログラム』に参加したメンバーからは、プログラムにチャレンジすること自体が刺激になり、それまでうまくいっていた環境からあえて抜け出したことで、見方が変わったという声が多く寄せられている。大切なのは経験を捨てるのではなく、さまざまな経験をどうやって自分のなかで「化学合成」させていくのかということのようである。シニア世代に必要なのは現状維持から飛び出す勇気30代、40代のキャリア形成についてはその実態が見えてきたが、彼らが今後勤続を重ねて※ スモールビジネス……企業形態の一種で、優良なベンチャー企業や中小企業のことキャリア越境学習プログラムにあわせて行われた社内研修

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る