エルダー2021年8月号
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2021.820わう街へと変貌を遂げた。慶應MCCは再開発の一環としての「学びの場の創出」という計画に、慶應義塾が参画してスタートしたものである。運営は同塾の関連法人である株式会社慶應学術事業会が行っている。慶應MCCのラーニングファシリテーターを務める保ほう谷や範子さんは、大学ではなく企業が運営するメリットについて次のように説明する。「ビジネスパーソンの学びやすさに大きく貢献していると思っています。さまざまな情報が行き交う世界有数のビジネスセンターである丸の内で、慶應義塾大学をはじめとする大学の英知を、働く人たちに最適な手段、スピードでお伝えできるのは、機動性の高い企業ならではのメリットといえます」なお、慶應義塾大学は主に社会人を対象とした慶應義塾大学ビジネススクール(KBS)を開講しているが、こちらは全日制の大学院であり、MBA取得を目的としている。ビジネスパーソンが働きながら学べる場である慶應MCCとの棲み分けがなされているとのことだ。多様なプログラムと多彩な学び方を提供慶應MCCの公開プログラムは大きく二つに分けられる。主に30~50代のビジネスパーソンが、仕事の方法論の習得から専門分野を深く掘り下げるなど、経営の本質を学んでいる「ビジネス・経営プログラム」と、セカンドキャリアを見すえた参加者が比較的多く、30~70代と幅広い年代が学んでいる「agora(アゴラ)」だ。さらに、ビジネス・経営プログラムはビジネスの原理原則、変化を起こす思考法を学び、多様な人とのかかわり方を実務で活用する実践力を養う「ビジネスコアプログラム」と、経営に関する高度専門知識や戦略課題をテーマに、専門性を深める「先端・専門プログラム」 に分けられている。ビジネス・経営プログラムのなかでも、特に人気の高いプログラムの一つが「戦略的交渉力」だ。一コマの流れを紹介すると、まず講義において交渉の理論と心理について学び、次に模擬交渉で実践する。ここで自身の思考のクセを知り、模擬的にさまざまな業種の他者視点に立つことで、交渉する力を身につける。最後に模擬交渉を行った体感をフィードバックして理論に結びつけたところで終了。プログラムで得た知見を日々の業務に落とし込み、ひいては意識と行動を変えることにつなげている。一方、agoraは古典、歴史、芸術、身体論など多彩なテーマを扱い、社会観、人間観を養う講座である。agoraの人気プログラムに「作家・阿あ刀とう田だ高たかしさんと小説を語らう」という講座がある。課題となる短編小説を読んで参加者がそれぞれ自身の感想を話し、講師の阿刀田氏と感想を共有する。阿刀田氏のわかりやすい解説と魅力的な人柄に触れながら、小説を楽しみ、自らの人授業風景

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