エルダー2021年8月号
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2021.824している認定NPO法人サービスグラントと協働しながら10年間で延べ54団体の各種プロジェクトを支援。参画した延べ社員数は296人に上る。こうした職業上のスキルや経験を活かしたボランティアの新たなスタイルは、2016年度に東京都の「共助社会づくりを進めるための社会貢献大賞」で特別賞に輝くなど社内外で注目を集めている。グループ会社も参加対象、幅広い職種から従業員がチームでNPOの課題解決プロボノを始めた理由について、事業を統括するCSR・社会文化部事業推進課の東とう郷ごう琴こと子こ主幹は「従業員のスキルや経験を広く社会のなかで役立て、NPOの事業展開力の強化を支援して社会課題の解決をさらに促進するのがねらいです」と説明する。同社のプロボノは、参加できる従業員にグループ会社も含まれ、正規、非正規、派遣を問わず手をあげられるオープンさも特徴だ。これまでに企画・マーケティング、広報、営業、経営企画、新規事業開発、システムエンジニア、財務・会計など多彩な所属や年齢、職位の従業員が名乗りを上げた。活動はすべて無報酬かつ就業時間外に行うものの、従業員が潜在的に持つ「自身のスキルや経験をもっと社会のために役立てたい」、「自身の視野を広げ成長したい」、「ネットワークを広げたい」といった社会奉仕などに対するニーズを何らかの形で受けとめる機会を設けようと、会社が主導して2011年度にプロボノプログラムを立ち上げた。同社でプロボノは、実際にどのように進められるのか。毎年、社内で説明会が行われ参加希望者は得意とするスキルや技能を登録する。NPOのニーズに基づいて事務局がメンバー4~7人によるチームを編成し、プロジェクトに参画してもらう。メンバーがプロボノに充てる時間は週平均で5時間程度、活動期間は短期(約4~5カ月間)と長期(約7~8カ月間)の主に2種類。メンバーたちはNPO関係者とメールのやり取りやオンラインで会議を重ね、最後に具体的な成果物を納めて終了する流れが一般的だ。多忙なビジネスパーソンが約半年間にわたり、プロボノのための時間を捻ねん出しゅつするのはむずかしそうだが、「事前にプロジェクト期間とチーム内での役割によって忙しい時期がある程度わかるため、従業員も計画が立てやすく活動しやすいと感じてもらっています」と東郷主幹は話す。2020(令和2)年度は社員31人が、環境や福祉、災害復興、海外での平和教育などに取り組むNPO4団体に対する支援活動に従事した。2021年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、原則オンラインで計5団体の支援活動に取り組んでいる。開始から11年目を迎えたプロボノについて、東郷主幹は「従業員にとっても、NPO支援を通じて社会課題解決の現場や、NPOのみなさんの熱い志に触れることで、イノベーションマインドの向上につながっており、本業にもよい変化が生み出されています」と意義を強調する。実際に毎年、プロボノ参加者からは「社会貢献したというよりも勉強させてもらった」などと社内では得がたい経験や外部の人とのかかわりを肯定的に受けとめる反応が目立つという。東郷主幹自身も2012年度、若年層の就労支援や不登校児への学習支援に取り組むNPOでプロボノ活動の経験を持つ。取り組んだのは東郷琴子主幹

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