エルダー2021年8月号
27/68

特集生涯現役時代の“学び”を考えるエルダー25NPOのホームページを訴求力の高い内容に刷新するもの。団体が社会に向けて発信するメッセージを明確にしていくため、当事者や家族とも直接会話する機会を得て、その生活ぶりや胸の内に触れた。団体の活動の意義を改めて認識し、「困難を抱えている方々の声を直接聞くことで、自分ごととしてとらえるきっかけになりました。自分自身の子育てや仕事への姿勢にも影響を受け、そこで出会った有識者の方とはいまも仕事でおつき合いをしています」と感慨深げに話す。同社のプロボノは特定の世代に照準を定めていないため、プロボノ事務局に登録した296人は新入社員からシニアまでと幅広い。一方で、年代別でみると、40代が約34%、50代が約17%と中高年層が半数以上を占めている。東郷主幹は登録者全体の印象について「従来のボランティアとは違って自分のビジネススキルや職務経験が活かせるという点で、初めてのボランティアがプロボノという人が多くいます。さらに、日ごろから社会課題に対してアンテナを立てている人も多いです」と語る。さらに「『プロボノ=専門性の高い技術力』と敷居の高そうなイメージがありますが、どのような職種の人でも参加できます。一人ではなくチームで取り組むので、NPOを応援したいという気持ちがあれば、だれでも能力を発揮できます」と特色について語る。50代を迎えてキャリアと向き合う契機に会員獲得のための市場調査に奔走「人生100年時代といわれるなかで50代を迎えて、今後のキャリアをどう築いていこうかと考えたのがきっかけです。自分のスキルが社外で役立つのかどうかを知る機会になればと思いました」。こう話すのは、企業向け人材育成や組織開発のコンサルティングを手がける「パナソニックライフソリューションズ創研」の九州研修所で所長を務めている久保山武さん(53歳)だ。2020年8月~2021年2月、福岡県南西部に位置する八や女め市黒木町笠原地区を拠点に都市部と農山村の交流事業などを手がける認定NPO法人山村塾でのプロボノプロジェクトに参画した。1994年に設立された山村塾は棚田と山林を保護する活動を始め、都市在住者に山村での仕事や農作業を体験する機会を提供している。その一環として、豊かな自然環境で育った米や野菜を買ってもらうプロジェクトを続けているなかで、2017年に起きた九州北部豪雨で同地区の田畑が甚大な被害を受けた。被災直後は全国から寄付やボランティアが急増したが、時間の経過とともに地元生産者が丹精に育てた米を買って食べてもらう「笠原棚田米プロジェクト」は、購入者であるサポーターが年々減少していた。久保山さんを含む20~50代の男女9人でつくるチームに課されたミッションは、サポーター獲得に向けNPOの活動や理念に関する新たな情報発信の方法の検討だった。メンバーにマーケティング業務に精通した人も多く、久保山さんたちは「笠原棚田米プロジェクト」の関係者NPOの拠点を現地訪問した久保山武さん(左)

元のページ  ../index.html#27

このブックを見る