エルダー2021年8月号
29/68

エルダー27FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫昔は赤シソ、いまはオオバ赤シソから青シソ(オオバ)へシソは漢字では「紫蘇」と書きます。赤紫色をした、命を蘇らせる力のある植物という意味で、その栄養効果や芳香など薬効性の高さをいったものです。昔は、梅干しは自家製でしたから、着色用に赤シソは欠かせませんでした。しかし、戦後はライフスタイルの変化によって、梅干しは買う食品となり、シソも変化して赤シソから青シソになりました。日本人が大好きなシソのさわやかな香りはペリルアルデヒドで、薬味に欠かせません。料理に添える場合でしたら、赤シソよりも青シソの方が見た目にも美しいし、清涼感もあります。やがて青シソは「オオバ(大葉)」と呼ばれるようになり、薬味やあしらい、料理などに用いられて現在に続いています。オオバの栄養と薬効香りや味わいだけではなく、オオバは栄養的にもとてもすぐれています。香り成分の中核をなすペリルアルデヒドには強い殺菌力があり、食中毒の予防剤として刺身に添えられています。さらに、私たちの嗅覚細胞を刺激して唾液や胃液の分泌をうながし、食べたものの消化吸収に役に立ちます。刺身のツマにはオオバだけではなく、穂ジソ(未熟な実)なども使われますが、それぞれ芳香と殺菌力、ビタミンなどの栄養を持ち、食欲増進効果がありますから、単に飾りと見るのではなく、しっかりと食べたいものです。オオバにはシソ油が含まれ、そのなかのアルファ-リノレン酸には血行をスムーズにして老化を防ぐ働きがあります。体の老化を早めてしまう体細胞の酸化も健康長寿の大敵ですが、それを防ぐのが緑黄色野菜に多いベータカロテン。この成分が、オオバは野菜のなかではトップクラスの含有量なのです。ほかには、若さを保つ美肌効果のビタミンEや骨を丈夫にするビタミンK、脳の老化を防ぐ葉酸、免疫力を高めるビタミンC、カルシウムやカリウムなどのミネラルも多く含まれています。334

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る