エルダー2021年8月号
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ハラスメント防止措置について1「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」の改正により、ハラスメント防止措置が義務化されました。典型的には、通報窓口の設置などにより、ハラスメントの把握を早め、発生を予防することが求められているところですが、通報を受けた後は、調査や対処が必要になります。調査や対処を実際に行うにあたっては、どのような行為がパワーハラスメントに該当するのかという基本的な知識を有していなければ、法律においても求められている迅速かつ適切な対応ができないことにもなりかねません。ハラスメント該当の判断について2同法においては、「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」が禁止されており、この内容がいわゆるパワーハラスメントの定義に該当するといえるでしょう。とはいえ、この表現だけでは具体的な対応のポイントを把握することはむずかしいかもしれません。重要である要素としては、「必要性」と「相当性」の二つであり、これらを的確に判断することが、パワーハラスメント対応への第一歩になると思います。わかりやすく説明するために、「必要性」という言葉を置き換えれば、ハラスメントに該当しかねない行為を「なぜ」行ったのかという理由のことをさしています。また、「相当性」という言葉は、その行為の「手段」や「方法」、「程度」をさしています。違法なパワーハラスメントに該当するか否かについては、この「必要性」と「相当性」のバランスを考慮して、必要性が高ければ取りうる手段や方法の選択肢が広くなり、必要性が低いのであれば取りうる手段や方法の選択肢も狭くなるといえます。この判断と、厚生労働省が整理している6類型を照らし合わせてみることも重要です。6類型とは以下のような分類です。①身体的な攻撃②精神的な攻撃③人間関係からの切り離し④過大な要求⑤過小な要求⑥個の侵害①身体的な攻撃の必要性は、ほとんどの場合において認められず、違法なパワーハラスメントに該当する可能性が高いといえるでしょう。一方で、警備業務の訓練や実習などもあることから、身体的な攻撃だからといって必要性がまったく認められないわけではありませんが、特殊な事情が必要であると理解しておくことが重要です。厚生労働省のガイドラインにおいて非該当例とされているのも「誤ってぶつかる」のみです。厚生労働省のガイドラインにおいて、該当例と非該当例が紹介されています。裁判例の傾向なども参考になるのでご紹介します。A2021.846パワーハラスメントと判断される行為とはどのようなものですか労働施策総合推進法の改正にともないハラスメント防止措置を準備したものの、ハラスメントに該当するか否かの判断がむずかしく、苦慮しています。参考になる情報はあるのでしょうか。Q2

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