エルダー2021年8月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2021.850今回は、ジョブ・カードについて取り上げます。名称を聞いたことがない、内容をよく知らないという方もいるかと思いますが、政府の掲げる戦略や雇用政策とのかかわりが深く、普及・促進にかなりの力が入れられている制度です。ジョブ・カードの目的と活用ジョブ・カードについては、厚生労働省が運営している「ジョブ・カード制度 総合サイト」に概要・活用法から活用支援ツールまでまとめられています。そこではジョブ・カードについて、「『生涯を通じたキャリア・プランニング』及び『職業能力の証明』の機能を担うツール」と定義されています。前者は自身の職業経験、強みや志向を棚卸しすることでキャリアを考えることの支援をする、後者は学習・訓練歴や職務経験などの情報を蓄積することで職業能力を見える化することを目的としています。まとめると、ジョブ・カードとは、キャリアを自身で考え他者に証明するための支援ツールといえます。活用法についてみていきます。まずは、指定された様式(カード)に自身の情報を記入・蓄積していきます。様式はキャリアプラン・職務経歴・職業能力証明(免許・資格)・職業能力証明(学習歴・訓練歴)・職業能力証明(訓練成果・実務成果)・職務経歴書(ジョブ・カード標準様式)といった複数に分かれています。これらのシートは在職者用・求職者用・学生用に大別されます。次に、記入した情報をもとに、職業選択や中長期のキャリア形成、それを実現するための教育訓練に関するアドバイスを受けるキャリアコンサルティングにより自身のキャリアに対する考えを深めていきます。また、記入された様式を加工し履歴書の付属資料として採用を希望する企業に提出することで、企業側が採用したい経験やスキルなどを有しているかを判断する材料としていきます。企業にもジョブ・カードの導入が推奨されています。在職者に対しても自身の経歴やスキルなどの棚卸しをし、キャリアコンサルティングを受けてもらうことで、計画的な教育訓練を実施しやすくなり、社員の仕事に対するモチベーションの向上、離職者の減少などが効果として期待できるからです。ジョブ・カードと政府の戦略・労働政策とのかかわりジョブ・カードの活用促進には、政府や厚生労働省がかなりの力を入れています。キャリア形成という本来は個人の課題に対して、公的機関が強く支援することを疑問に思われるかもし「ジョブ・カード」第15回

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