エルダー2021年8月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー51れませんが、成長戦略や雇用政策とのかかわりといった観点からみると理解できるかと思います。図表は2018(平成30)年に開催された「第7回 ジョブ・カード制度推進会議」の参考資料の抜粋で、ジョブ・カード関連制度についてまとめています。2008年を起点とし、このころ社会問題として顕在化していた非正規労働者やフリーターなど職業能力形成の機会に恵まれない人に対する〝救済策〞としてジョブ・カード制度は創設されました。2011年には政府の新成長戦略のもと、少子高齢化による労働力人口減少への対応策として「若者・女性・高齢者など潜在的な能力を有する人々の労働市場への参加を促進」がうたわれ、その推進策の一環としてジョブ・カードが位置づけられ、2020年までにジョブ・カード取得者300万人が目標として設定されました。2014年の「日本再興戦略」改定2014によりジョブ・カードが「学生段階から職業生活を通じて活用し、自身の職務や実績・経験、能力等の明確化を図る」ものとされ、2015年には新ジョブ・カードとしてコンセプト・仕様ともに現在のものに見直しが図られています。従来の〝救済策〞から現在のキャリア・プランニングと職業能力の証明に重きが置かれた背景には、有効求人倍率を含めた雇用環境が改善される一方で、人生100年時代の長い職業人生に代表されるキャリア・プランニングの重要性や生産性向上に向けた職業能力と職務のマッチングなど、雇用や労働に関する課題が変化したことがあげられます。しかし、ジョブ・カードの普及に関しては十分ではない状況です。広報活動関連施策や助成金を導入するなど普及に努めてきましたが、目標300万人に対して、2019年8月末時点で228万人(「キャリア形成支援策としての キャリアコンサルティングについて」資料)といわれ目標達成には遠い状況にあります。高齢者雇用とジョブ・カード高齢者雇用とジョブ・カードには深いかかわりがあります。高年齢者雇用安定法により解雇などで離職が予定されている高年齢者など(45歳以上65歳未満)が希望する際には円滑な再就職活動を行えるように、本人の職務経歴や職業能力などの情報を記載した求職活動支援書を作成・交付しなければならないとされています。記載されたジョブ・カードに再就職援助措置関係シートをつけることで求職活動支援書として活用することができます。また、同一の会社に定年退職後も再雇用される場合や、積極的に別の会社での再就職活動をする際にもジョブ・カードは有効です。本人が定年後の職業人生においてやりたいことを描き、それを実行するための能力を証明する助けとなります。一方企業側では、再雇用や業務付与や採用について詳細な根拠をもって行うことができ、能力のミスマッチを防ぐことができます。普及に遅れがみられるジョブ・カードですが、高齢者雇用におけるメリットはより打ち出してもよいのではないかと筆者は考えています。☆  ☆次回は「役員」について取り上げる予定です。2008年ジョブ・カード制度創設・職業能力形成プログラム策定・全国推進基本計画策定2010年新成長戦略2011年「ジョブ・カード制度新全国推進基本計画」策定2012年職業能力形成プログラムに公共職業訓練・求職者支援訓練を追加2013年キャリアアップ助成金創設2014年専門実践教育訓練創設2015年企業内人材育成推進助成金創設・新ジョブ・カード制度に移行2016年中高年齢者雇用型訓練創設・職業能力形成プログラムに追加2018年ジョブ・カード様式の改正出典:第7回ジョブ・カード制度推進会議の資料を基に筆者作成図表  ジョブ・カード推進に関する制度・施策

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