エルダー2021年8月号
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エルダー55意欲あふれる高齢者のはつらつ人生を応援 ▼Reportかつて航空会社の社員として羽田空港でチェックインや発券などカウンター業務に就いていた佐野良二さん。家庭の事情により定年の1年前に早期退職し、63歳のときにセンターの紹介で、音楽演劇練習場「パピオビールーム」の窓口業務の仕事を始めた。2日出勤1日休みのシフトで、17時から23時の勤務に就いている。「人生は何が起こるかわからないもので、勤めていた航空会社をあと1年で定年というとき郷里の父が倒れ、介護のために退職しました。2カ月に一度福岡県から新潟県に住む父を訪ねる暮らしが3年続きました。介護が終わると気持ちの張りがなくなり、無為の日々を送っている私を見かねたのか、友人がセンターを紹介してくれました。さっそく登録をして、夜間勤務の仕事を紹介してもらいました。最初は夜間勤務に抵抗がありましたが、いまではすっかり慣れました。何よりも利用者さんとの触れ合いが楽しく、ていねいな言葉と笑顔で対応するよう心がけています。笑顔でお客さまに対応することは前職の業務で叩き込まれました。経験は人生を豊かにします。高齢者でもだれかの役に立てることを誇りに、健康に気をつけて長く働き続けたいと思っています」宇藤海畦子さんは、働いた経験がなく、専業主婦として子育てや孫の世話に専念してきたが、一人暮らしをきっかけに外で働くことを考えるようになった。シニアの社会参加を支援している福岡県70歳現役応援センターを訪ねたときに、たまたま福岡県高齢者能力活用センターの所長が窓口にいたことから、その足でセンターに行き登録。現在は、お弁当や惣菜を扱う「博多いもっ子屋」で働いている。働いて2年目ながら、仕事先の店舗では、貴重な戦力となっているそうだ。「家の事情で生活環境が一変し、私も自立しなくてはと思うようになった矢先、友人から『70歳現役応援センター』を紹介され、勇気を振り絞って出かけていきました。たまたまその日、福岡県高齢者能力活用センターの所長さんが窓口に来ていて、いまから一緒に自分のところへ来ないかと誘ってくださいました。私は人に会うのが好きなのでお弁当や惣菜を扱う『博多いもっ子屋』を紹介してもらいました。初めて見学したときのことはいまも忘れられません。『70歳を超えており、働いた経験もありません』という私に、社長さんは『私が求めるのは笑顔と元気と思いやりで、一番ほしいのは宇藤さんの74年の人生経験です』と、笑顔で話してくれました。嬉しくて涙がこぼれました。働き始めたばかりのころは、レジの扱いに慣れず失敗の連続でした。それでも優しく見守ってくれた周りのみなさんに恩返しするつもりで、体力が続くかぎりここでがんばりたいと思います。もし仕事のことで悩んでいる人がいたら、『大丈夫、立派に働けるよ』と、今度は私が励ましてあげる番だと思っています」かつての経験を活かし音楽演劇練習場の窓口業務に佐野 良二さん(70歳)シニア人材の声❶仕事経験ゼロから就業74年の人生経験を活かして活躍宇う藤とう 海み畦え子こさん(76歳)シニア人材の声❷

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