エルダー2021年8月号
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エルダー7特集生涯現役時代の“学び”を考える積み重ねた年齢、経験に価値ありリベラルアーツが豊かな発想を生む―そもそもリカレント教育(学び直し)が必要になった背景には、何があるのでしょうか。また、その意味合いについて教えてください。高橋 2000(平成12)年前後は山一証券や日本長期信用銀行などの破綻、その後の大手メーカーの大リストラが行われた時代です。先に何が起こるかわからない、キャリアが予定通り積み上がらないという時代のはじまりでした。それがいまやっと、意識されて語られるようになってきました。AIやIoTなどの技術の進展や、グローバル展開などの環境変化が激しいなか、ビジネスモデルも大きく変化しています。リアルの店舗がなくなってEC(電子商取引)になるケースでは、リアルの店舗の販売員はAIにとって代わられたのではなくて、ビジネスモデルが変わることによって仕事を失うということです。だから、いつどんな仕事がなくなるのかは、本当にだれも分かりません。このような状況下で、まさに学び直しがとても必要になってきました。キャリアは単に積み上げるものではなく、つくり変えなければならないものだということ。自律的キャリア形成が重要だということです。キャリアというのは、1本線でずっとじわじわ習熟するものではなくて、停滞して、またそこから学び直すようなことを、生涯のうちに何回かはやらなくてはいけないだろうと思います。リカレント教育は、新しいテクニックを学ぶリスキリング(職業能力の再開発・再教育)とは違います。本当にゼロからのスタートだったら若い人間にかなうわけがない。年齢を重ね、経験を重ねてきて、積み上げてきたものが何もないということはありません。それまで、どんな学び方をしてきたかで、次の仕事に入ってどこまで積み上げた経験を活かせるか活かせないか、大きく変わります。違う仕事をしてきた経験があるからこそ、その人にしかできないバリューの出し方があると思います。仕事のテクニックを学ぶことを考えると、次変化の激しい時代にリカレント教育で中高年齢層の自律的キャリア形成を慶應義塾大学大学院 特任教授 高橋俊介 2021(令和3)年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されるなど「人生100年時代」への流れが着実に加速するなか、40〜50代を迎えた労働者が今後、第二の人生やセカンドキャリアをいかに築いていくのかが一層の課題になることが予想される。ミドル・シニア世代を含めたリカレント教育(学び直し)に取り組む意義や実践するポイント、その浸透を阻はばむ課題とは何なのか。キャリア開発などに造詣の深い、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介氏にお話をうかがった。

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