エルダー2021年9月号
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2021.98※  池田(2021)は著者『仕事と介護の両立』にて「介護は育児と違う」という視点から、育児・介護休業法を体系的に解説していますおいては選択的措置義務であり、企業は短時間勤務の代わりにフレックスタイムや時差出勤あるいは介護サービスの費用補助の制度を導入してもよいことになっています。これも育児と異なる介護の性質をふまえています。近年、独身の介護者が増えていますが、彼(女)らの多くは自らの収入で家計を支えながら介護をする必要があります。短時間勤務のように収入の減少をともなう両立支援制度は、家計にやさしくありません。同じことは一人親世帯にもいえますが、育児より介護の方が、ケアに費やす時間の確保と家計維持のための収入の確保という問題は一般的になりつつあります。そのため、なるべく所定労働時間は働ける方がよいという発想で、フレックスタイムや時差出勤制度を利用する選択肢を残しています。そのうえで、所定外の残業や休日労働は免除されて介護の時間を確保できるという考え方です。長期休業や大幅な労働時間の短縮は、所得の減少(所得ロス)だけでなく、仕事の責任を果たしキャリアを形成する機会を制約すること(キャリアロス)にもつながります。その意味でも、なるべく普段通りに勤務しながら介護に対応できた方がよいといえます。介護に費やす時間をなるべく多くするのではなく、なるべく仕事をしながら柔軟に介護に対応するという考え方のもと、2016年の育児・介護休業法改正においては仕事と介護の両立の実態を検討し直し、図表1のような制度設計になりました。その前提にあるのは、介護は育児とは違うということです※。図表1 2016年改正育児・介護休業法における仕事と介護の両立支援制度出典: 厚生労働省Webサイト「平成28年改正法の概要」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000132033.pdf)要介護状態(制度利用の申出が可能な状態)介護休業(93日)家族を介護する労働者に関して、介護休業制度又は週若しくは月の所定労働時間の短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする時間、回数等に配慮した必要な措置を講ずる努力義務所定外労働の免除3年間の間で少なくとも2回以上利用が可能選択的措置義務★(介護休業をしない期間利用可能)★と措置内容は同様(いずれか一つを事業主が選択して措置)1週又は月の所定労働時間の短縮措置(短時間勤務)2フレックスタイム制度3始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ(時差出勤の制度)4 介護サービスを利用する場合、労働者が負担する費用を助成する制度その他これに準ずる制度介護終了(対象家族の死亡)※ 要介護状態にある対象家族ごとに以下の制度が利用可能選択的措置義務介護休業②介護休業③時間外労働・深夜業の制限介護休暇介護休業①介護休業①+②+③=93日93日間:現行制度:努力義務:改正部分半日単位の取得(所定労働時間の二分の一)(対象家族1人につき年5日、2人以上の場合に10日付与される)

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