エルダー2021年9月号
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2021.910も介護は育児と違うという考え方を持つ必要があります。望ましい介護の多様化3介護は育児と違って、先行きの見通しを立てにくい、そのことが介護者の負担感を大きくしています。生活時間配分の問題として、介護休業や短時間勤務制度は、一時的な事態に対応する手段としては有効ですが、日常的な介護を継続的にになうための利用は望ましくありません。終わりのみえない介護においては、「いつになったら通常の働き方に戻れるのか」という問題が起きるからです。健康との関係でも、心身に疲労を抱えた生活が続くと、介護がいつまで続くのかと途方に暮れてしまいます。いつまで続くのかわからないのであれば、いつまでも続けられる方法で仕事と介護の両立を図ることが重要です。そのために、要介護者と適切な距離を取り、息抜きをすることも必要です。生活時間配分においても仕事と介護で時間を埋めるのではなく、自分の時間を持つことが重要です。近年の高齢者介護においては、乳幼児の育児のようなつきっきりのケアを献身的に行うのではなく、ケアが必要であっても要介護者自身にできることは自分でさせる、という意味で要介護者の自立を重視する考え方が広がりつつあります。そのようにして、要介護者と適切な距離を取ることで、生活時間配分の面でも健康管理の面でも、仕事と介護を両立しやすくなっているようです((独)労働政策研究・研修機構 2020)。献身的な介護をよいこととする考え方もありますが、望ましいケアのあり方が多様化しているのです。仕事と家庭の両立に関する議論は、ケアのにない手に焦点をあて、社会的サービスの使いやすさや、家族との分担を問題にしてきました。しかし、介護においては、要介護者をどのようにケアをするかという問題にも目を向ける必要があります。生活時間配分と健康問題の基底に、ケアをめぐる人間関係の問題があることも育児と異なる介護の特徴だといえます。〔参考文献〕●池田心豪(2021)『仕事と介護の両立』佐藤博樹・武石恵美子責任編集、シリーズ ダイバーシティ経営、 中央経済社●(独)労働政策研究・研修機構(2015)『仕事と介護の両立』労働政策研究報告書No.170●(独)労働政策研究・研修機構(2020)『再家族化する介護と仕事の両立』労働政策研究報告書No.204出典:(独)労働政策研究・研修機構(2015)『仕事と介護の両立』労働政策研究報告書No.170図表2 仕事と介護の両立相関図身体介助の必要緊急対応と態勢づくり連続休暇の必要退職介護休業通院介助介護サービスの供給制約勤務時間調整の必要健康状態悪化疲労ストレス認知症介護休暇・短時間勤務仕事の能率低下

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