エルダー2021年9月号
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2021.916状とニーズを再度把握しましょう。現状把握をしておきたい項目の例は図表2の通りです。最近では、介護を隠すような雰囲気が少なくなってきましたが、個人差もあるので、アンケートをとる際はプライベートな情報に配慮します。アンケートは、最初に現在の介護の状況、介護の可能性について確認し、その介護の状況にあわせて設問を変えて設定すると効果的です。また、介護の可能性はあっても具体的な介護のイメージがつかない人が多い場合は、アンケートだけではなく、仕事と介護の両立についてのセミナーを実施したうえでアンケートを実施してもよいでしょう。次に、把握した現状やニーズから両立支援の方向性を決めます。両立支援の方向性は、法律で決められた支援を行うだけではなく利用を促進する運用重視の方針、法律を超える制度を策定し制度の充実を図る方針、法律の支援制度にとらわれず予防から両立まで柔軟な制度を導入する方針など、把握した現状やニーズとほかの人事施策とのバランスを考えて決めていきます。支援策にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、方針にそって導入を検討し決定します。その後、導入を決めた支援策の策定作業をし、従業員へ周知し、実施していきます。支援の種類とそのメリット・デメリット4図表3は主な支援策のメリットとデメリットを企業と従業員の立場でまとめたものです。勤務支援は、従業員にとっては選択肢が多いと両立する際に、柔軟な働き方ができる可能性が高くなりますが、企業からみると制度を運用するむずかしさや周囲の従業員の納得度などの問題があります。また、休暇を有給にすれば人件費の増加などにもなります。例えば、未消化分の年次有給休暇を積み立てる積立年次有給休暇は、介護にかぎらず私傷病などでも利用できるようにすれば、比較的公平性が保たれ、納得度も高くなります。介護休業を法律で定められた期間より長くする場合は、法律を超えた期間分は雇用保険の介護休業給付金が支給されません。このため、せっかく介護休業を長くしても思いのほか活用されない場合があります。また、法律で定めた介護休業期間に会社が給与を全額支給すると、雇用保険から給付金が支給されませんので注意が必要です。在宅勤務は、介護も仕事も両立しやすいと思われがちですが、実際は問題もあります。本来、在宅勤務は勤務する場所が会社ではなく自宅で仕事をすることをいい、仕事中に介護をしてよいということではありません。また、仕事中に介護をすることで、業務が捗はかどらず深夜に仕事をするなど、本人が無理をして健康を害する場合もあります。在宅勤務はあくまで、通勤時間がないことをメリットととらえ、勤務時間中は、自宅でもしっかり働くことができる環境をつくるようにしましょう。介護する従業員の経済的な負担を軽減する支援策を検討する場合、導入時点では対象者が少なくても将来的には対象者が増えることも想定して導入を検討してください。今後は介護をする従業員が増加することが予想されます。慎重に検討していきましょう。図表2 介護に関する実態把握の項目例従業員の状況把握従業員の介護の可能性や状況□従業員の属性   □親の年齢□親と同居か別居か □現状の介護状況□介護の将来の可能性自社の両立支援□現状の両立支援の認知度□両立支援の利用予定□両立支援を利用するうえでの不安□両立支援への要望介護について□介護に関する基礎知識の有無□介護全般に関する不安・要望介護経験者への確認□現状の両立支援の利用経験□現状の両立支援の使い勝手□必要だと思う両立支援自社の状況把握□現状の両立支援の利用率□介護離職の状況※あおぞらコンサルティング作成

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