エルダー2021年9月号
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特集 “働き続ける”ための仕事と介護の両立支援エルダー17なかでも注意が必要なのが、介護休業中の本人負担分の社会保険料を、本人に代わり会社が負担する支援です。基本的に介護休業中は給与が支給されませんが、本人は社会保険料を負担しなければなりません。それを本人から保険料を徴収せず、会社が負担する支援です。企業によっては、これを介護支援制度と意識せず、社会保険料を負担している場合もみられます。介護する従業員にとって、給与が支給されず、収入が雇用保険の介護休業給付にかぎられるときに会社が社会保険料を負担してくれると「助かる」、「ありがたい」と考える人は多いと思います。しかし、社会保険料の負担の仕組みをよく理解していない従業員も多く、保険料が徴収されないのはあたり前だと誤解していたり、会社の負担のわりに介護する従業員は効果を感じないケースも見受けられます。この支援は、平均的に対象者の給与水準が高い場合が多く、標準報酬月額50万円の場合、協会けんぽ(東京都)で介護保険料も含めると月額約7万5000円が会社の負担となります。このほか、所得税の取扱いは、慶弔見舞金などのように非課税扱いではなく、会社が負担した社会保険料は給与として、税金の対象となるので注意しましょう。そのほか、仕事と介護に関する情報提供や相談体制も必要です。情報提供などは企業の費用や運営などの負担がありますが、企業側が導入を決めれば比較的短期で導入することができます。ただ、求められる介護の情報は多岐にわたるため、すべての人に効果的な情報提供をすることがむずかしく、また、期待する効果が短期的にはわかりにくいところがあります。図表3 介護支援施策の例勤務支援勤務措置メリットデメリット従業員会社従業員会社介護休業・急な介護の発生等緊急な対応ができる・介護初期の介護体制づくり期間として有効・雇用保険の給付を利用し従業員の給与補てんが可能・休業期間内に介護が終わらない場合がほとんど・休業中の給与補てんがない場合は経済的不安・休業中の労働力低下と休業期間によっては代替要員確保が必要介護休暇・さまざまなケースに利用しやすい・手続きが簡易・周囲への業務負担少・本格的な介護には日数が不足する可能性・業務上、休業より影響は少ないが労働力は低下積立年次有給休暇・抵抗感が少なく、使いやすい・手続きが簡易・「介護」と特別視されにくい・周囲への業務負担少−・失効年休の管理が煩雑になる可能性・取得事由を増やすことで消化率があがりコスト増短時間勤務・勤務時間が短縮されることで心身の負担が軽減・デイサービス等の利用がしやすい・周囲への業務負担少・業務分担の見直しや予定が立てやすい・勤務時間短縮にともない給与補てんがされない場合は経済的不安の可能性・業務上、休業より影響は少ないが労働力低下フレックス勤務・従来通りの労働時間を確保するため経済的不安が少ない・介護を中心とした勤務体制づくりが可能・労働力を確保しつつ、勤務可能・労働時間を減らすことなく介護をするため、本人の身体・精神的負担が大きくなる可能性大・職種や部門によって、フレックスタイム勤務制度の導入が困難・会議や打ち合わせの時間が制約される可能性在宅勤務・通勤時間がなく介護時間を確保しやすい・介護中心の生活をしながら業務の遂行がしやすい・労働力を確保しつつ、継続勤務が可能・仕事と介護のメリハリがつけづらい・労働時間も介護時間も減らすことなく両立する場合は本人の身体・精神的負担大・勤怠管理、セキュリティ対応等の在宅勤務の導入コスト、管理負担が必要その他の支援費用補てん等・介護費用の負担が軽減され、従業員への効果大・周囲を気にせず利用しやすい−・費用補てんの対象となっている内容の利用がなければ効果なし・効果の高い費用補てんの項目の廃止・見直しが困難・コスト負担・介護をしていない従業員との待遇格差が明確になりやすい見舞金制度・介護費用の負担の緩和・介護以外の用途での利用も可能−−・介護をしていない従業員との待遇格差が明確になりやすい・支給基準の判断がむずかしい再雇用制度・退職後の再就職不安が軽減される・雇用リスクの軽減とともに雇用確保の手段として有効・仕事と介護の両立ができない・労働力の損失が大きい・再雇用基準の判断がむずかしい・再雇用後の処遇、復帰プログラムの検討が必要※あおぞらコンサルティング作成

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