エルダー2021年9月号
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2021.918支援策検討のポイントと注意点5支援策を検討する場合、介護は育児と違い、導入する支援策を介護する人みんなが利用できる場合は多くありません。また、介護する従業員が少ない場合はたくさんの支援策を導入し、働きやすくすることがよいように思いますが、利用者が増えた場合、周囲の理解を得ることが課題となります。仕事と介護の両立には支援策の充実を検討することも大事ですが、支援策を運用可能とする職場環境をつくることも重要です。仕事と介護の両立が可能な職場環境づくりは、介護だけではなく、仕事と育児の両立やハラスメントの予防にもつながります。仕事と介護の両立が可能な職場環境とは、多様性を受け入れ、情報の共有や連携が円滑で、業務が可視化され、多能工化され、ほかの人の業務支援がスムーズにできる職場づくりともいえます。職場環境づくりと相談窓口の設置6仕事と介護の両立を円滑にするには、支援策の充実だけではなく、職場環境づくり、従業員の意識改革が重要です。2021(令和3)年に成立し、2022年4月に施行される改正育児・介護休業法では、育児休業が取りやすい環境整備のための研修や相談窓口などの設置、妊娠や出産を申し出た従業員に対して個別に意向の確認をするなどの措置が義務づけられました。現在、介護については、法律で介護休業などの制度の利用や相談したことによる不利益な取扱いや、就業環境を害するハラスメントがないように相談体制を整備することが義務づけられています。現時点では育児が先行していますが、今後は仕事と介護の両立においても、環境整備のための研修や相談窓口の設置など、介護休業や介護の支援制度を利用しやすい雇用環境の整備が求められるでしょう。仕事と介護の両立を支援するための相談体制では、ハラスメントなど両立を阻害する原因を排除するためだけではなく、仕事と介護の両立のための情報提供や相談も行います。具体的には、介護に関する会社の勤務措置、休業、休暇のほか、介護保険の利用方法やサービス内容、仕事と介護の両立の考え方などです。相談体制を構築する際は、相談事案の取扱いと相談の範囲に注意が必要です。相談内容によっては、人事部門や上司と連携し対応する必要があります。このような場合は、事前に本人へ情報を共有することの了解を得て、連携した上司が誤解して不利益な行動をとらないように注意します。仕事と介護の両立の相談は、介護サービスやケアマネジャーに対する困りごとなどの介護自体の相談や家族とのトラブルの相談に発展する場合もみられます。介護が円滑にできないと従業員の介護負担が大きくなり、仕事と介護の両立ができない場合も出てきます。そのため、仕事と介護の相談は境界線がむずかしくなるので、介護自体の相談は原則、介護の専門家に任せ、会社側は家族の問題には介入しないようにします。ただ、人事担当者や管理職も介護がわからずには相談対応ができませんので、介護に関する基本的な知識があるとよいでしょう。職場環境づくりでは、従業員の意識改革も必要です。まず、仕事と介護の両立に関する情報提供から始め、介護離職をしないことの意味や一人で抱え込まず多くの支援を活用することが大事であることを伝えます。また、ロールプレイングなどを通じて、介護の現実を具体的にイメージしてもらうことで、職場での「お互いさま」の意識を引き出すことにもつながっていきます。仕事と介護の両立の支援は、制度の充実から運用しやすい環境づくりへと変化をしてきています。介護離職を防止するためには、それぞれの企業にあった支援策と環境整備を一歩ずつ進めていくことが大切です。

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