エルダー2021年9月号
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2021.920前から導入している。現在は、法定を超える年間12日の介護休暇制度に加えて、積立特別有給休暇を組み合わせて取得ができるようになっている。積立特別有給休暇は、介護、育児、私傷病、社会貢献活動など会社が認める用途で利用することができる。年次で付与される未消化の有給休暇を最大で60日間まで積み立てることが可能だ。2021年からは、介護休暇については時間単位で取得できるようにもなっている。介護休業制度の取得者は年間数人程度で、2020年度はコロナ禍によるテレワークの拡大もあり取得者数はゼロだった。コロナ禍におけるテレワーク勤務の場合、要介護者がいれば、介護を行いながら業務を行ってよいという柔軟な姿勢をとっていることがその要因のようだ。同社では働く場所、時間を含めて働き方の多様性と柔軟性を高めることを目的として早い段階からテレワークを取り入れ、整備を進めていた。2020年東京五輪・パラ五輪が本社の近隣で開催されることにともない、五輪開催中の交通混雑を避けるために、2017(平成29)年からテレワークを順次拡大。よって、2020年以降、新型コロナウイルス感染症感染拡大により緊急事態宣言が発出された際も、全社スムーズにテレワークへ移行することができたという。現在も継続してテレワークを推奨しており、出社率を3割以下に抑えている。一方、積立特別有給休暇を取得する社員は多く、この数年間は年間100〜200人が介護目的で制度を活用している。積立特別有給休暇と介護休暇や通常の有給休暇を組み合わせて介護にあたっている社員もいるそうだ。そのほかにも、柔軟な働き方を支援する制度として、短時間勤務制度とフレックスタイム制度を整えている。短時間勤務制度は、1日の規定勤務時間が7時間30分なのに対し、10分単位で1日最大2時間まで短縮できる制度。1日2時間を越えた不足分は月内の所定労働時間外で相殺することができる。介護や子どもの送迎など、朝夕の決まった時間に行わなければならない事柄に活用しやすい制度だ。フレックスタイム制度は、コアタイムとして定められた時間に就業していれば、各自で自由に始業・終業時間を決められる。原則として全社員が利用可能。一カ月間あたりの勤務日数×一日あたりの所定の就業時間が所定の時間を満たしていればよいので、計画的に利用するだけではなく、家庭の突発的なトラブルに対応することも可能だ。このように柔軟に働ける制度を取り入れていることも、介護休暇の取得者が少ない要因の一つになっているようだ。人事部ダイバーシティ推進室室長の宮みや森もり未み来らいさんは「介護休暇制度の利用者は一定数いますが、介護休業の利用者は少なく、介護離職をする社員はほぼいないので、介護をする社員に必要な制度が不足しているわけではないと考えています。しかし、制度や仕組みの整備だけではなく、それらを利用しやすい風土の醸成も含め、今後、より支援内容を充実させていくために、もう少しふみ込んで個々の社員の状況などを分析し、よりよい制度設計や施策の見直しを強化していく必要があると感じています」と話す。宮森未来人事部ダイバーシティ推進室室長(左)と藤田葉子人事部ダイバーシティ推進室主任

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