エルダー2021年9月号
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2021.922内容は「介護に備える」、「介護に直面したら」、「仕事と介護の両立のためのマネジメント」、「各種チェックシート」、「会社の制度紹介」の五つのカテゴリーで簡潔に章立てされ、社員自身の状況に応じて必要なところから読み進めることができる。図表を多用しているので理解しやすく、書き込み式シートやチェックリストなども盛り込み、自習形式で自身の状況が把握できるように工夫がされている。さらに、介護に関する公的制度・社内制度に関する情報などもまとめられている。社員にとって、将来的に介護の可能性がある両親や家族と話し合うきっかけとして、また介護が必要になった際に各種制度や利用方法などの参照ツールとしても活用してほしいと考えているそうだ。また、介護や育児について相談ができる「両立支援窓口」を社内に設けて、悩みを抱える社員に対し、対面、メール、オンライン、電話で対応している。両立を支援する知識と経験のある社員と外部の契約カウンセラーが相談にあたる。いまのところ、育児の相談に比べて、介護の相談は少ないようだが、今後増加する可能性があるとみている。例えば、遠方に住む親の介護が必要となって困っているという相談があった場合、全国にある同社の九つの支社・支店のうち、親の居住地に近く介護が可能な支社・支店の転勤を、現場の管理職を交えて調整するケースもある。このように介護離職を防ぐために、相談窓口が関連部署と連携し、柔軟に対応を行っている。転勤のない地域限定の働き方を選択できる制度もあり、相談窓口では各種制度を活用して仕事と介護の両立を実現できるようアドバイスしている。人事部ダイバーシティ推進室主任の藤田葉子さんは、「介護のことは直面してみないとわからないところがあります。いかに事前に介護とその支援施策について知ってもらうかが課題と考えています」と話す。社員アンケートを実施し施策の強化・見直しへ同社が実施している仕事と介護の両立支援の取組みは、「多様な個性を持つ社員が、個人の能力を最大限に発揮し、イノベーションが起こりやすい風土を醸成する」と掲げているダイバーシティ推進の方針のもとに実施している施策の一つだ。ダイバーシティ推進を含む風土改革は、同社の2018〜2020年の中期経営計画において重点施策の一つと位置づけられ、取組み指標および目標を設定して取り組んできた。ダイバーシティ推進室は、2013年に組織として設立以来、女性、障害者、育児・介護中の社員など多様な人材が、それぞれのキャリアを向上させ、能力を発揮しビジネスに貢献できるような環境を整備するため、必要な支援を積極的に実施している。宮森室長は「ダイバーシティ推進施策の一つである仕事と介護の両立支援については、当社にとってもこれから重要な問題になってくるのではないかと考えています。これまで介護の状況把握については2015年、2018年、今年度(予定)と社員のアンケート調査を実施しています。介護休業や介護休暇の取得状況だけでは見えてこない介護予備軍や介護にまつわる実態を調査し、経年で変化を見ています。アンケート調査結果をふまえ、施策の見直し、強化を図っていきます」と今後の方針を語った。「仕事と介護の両立支援ハンドブック」

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