エルダー2021年9月号
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2021.924すると今度は、「子どもが熱を出したら、休みたい」という要望があがってきた。いつ熱が出るかは予測できないので、急に休むことになる。それが可能になるようシフトや人数を見直し、対応できる体制をつくった。その次に取り組んだのは、特別有給休暇の充実。スタッフにアンケート調査を実施したところ、子どもの病気や行事などで年次有給休暇が不足し欠勤する人が多いことがわかり、保育参観休暇、授業参観休暇、パパのための産休など、独自の特別有給休暇を導入した。子どもの預け先に困っている人のために、事業所内託児所も設けた。「働き続けたい」、「介護もしたい」という声を受けて取組みを開始介護との両立支援に取り組み始めたのも早い。最初に話が出たのは創業後3~4年目だった。あるスタッフが、「仕事は辞めたくないけど、親の介護もしたい。どうしたらよいですか?」と涙ながらに訴えてきた。雅樂川社長は、不安に押しつぶされそうなスタッフの心に寄り添いながら、勤務時間や休暇制度を整えたり、デイサービスの利用や家族との分担などについてアドバイスして「働き続けたい」、「介護もしたい」という本人の思いに応えていった。介護と育児の違いに、介護はいつまで続くかわからないということがある。いつ通常勤務に戻れるか、いつまで支援が必要かわからないため、法定以上の支援に二の足を踏む企業もあるだろう。しかし、雅樂川社長の考えは違う。「いつまで続くかわからないからこそ、自分の生活は大事にしたほうがよいのです。全身全霊をかけて介護をしていると、どこかで息切れしてしまいます。また、かつては『仕事のためなら生活を犠牲にしてあたり前』、『仕事だから仕方ない』という考え方が主流でしたが、私は『仕事だから』というのはそこまで許される言葉ではないと思います。自分にとって生活が優先されるべきものであれば、『介護があるから』、『育児だから』、あるいは『行きたいところがあるから』と堂々といっていい。むしろそこをベースにするほうが、人間が生きていくうえで自然ではないでしょうか」独自の特別休暇――初期の準備や病院つき添い、息抜きの休暇も同社の取組みのなかで特にユニークなのが、独自の特別有給休暇である。雅樂川社長のコメントとともに紹介しよう。・﹁介護すぐ取って休暇﹂「一緒に日常を送っていた家族が急に入院すると、それまでと同じ時間軸では動けなくなります。病気の心配、病院とのやり取り、家庭内のルーティンワークの変更の三つが必ず起きます。余裕がないなかで仕事をしてもミスが増えますので、とりあえず1週間休んでこの三つを整えてもらいます」・﹁介護定期受診付添休暇﹂「群馬県の特性もあるかもしれませんが、高齢の家族などが病院に行く際に、自動車で送り迎えをする必要があり、スタッフの要望を受けて特別休暇を設けました。受診の頻度は人によって異なりますので、『月1回まで』といった上限回数は定めていません」※上記は現在の仕組み図表1 柔軟な勤務制度区分勤務時間正社員8:30~17:30(8:00~18:00の間で調整可能)短時間正社員小学校入学前までの子を持つ方8:30~17:30の間の4.5時間以上準社員小学生の子を持つ方、または同居家族の介護を行っている方 8:30~17:30の間の4.5時間以上パートタイマー8:30~17:30の間の4時間、週3日以上

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