エルダー2021年9月号
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特集 “働き続ける”ための仕事と介護の両立支援エルダー25・﹁介護楽しんで休暇﹂「ずっと介護をしていると疲れますし、たまには遊びたくなり、自分の時間がほしくなるのが普通だと思います。そこで、月1回まで介護している家族を会社で預かり、自分の時間に充ててもらうようにしました。自分が働く会社なので融通も利きます」なお、「介護すぐ取って休暇」であれば「今後、介護をする可能性があります」、「介護定期受診付添休暇」であれば「こういう頻度で定期受診します」というように、事前に申請してもらうことで、会社としてもある程度心づもりができるようにしている。意識改革の教育――スケジュールや自分の思い、役割を事前に認識させる教育に力を入れているのも特徴だ。社内勉強会では、独自のシートを作成し、自分の時間を確保すること、あらかじめ思いや役割を確認しておくことの重要性を伝えている。・﹁介護時間割表﹂「『デイサービスを利用するから大丈夫』などと思ってスケジュールを立てずに介護を始めると、自分の時間が置き去りになり、結果として介護に時間を合わせなければならなくなり、ストレスを抱えることになります。この時間割表では、各曜日の0~24時のマスに、まず『私』の時間︵仕事や習い事などの予定︶を入れます。7時に出勤し19時に帰宅するのであれば、その時間を先に確保する。『私』一人ではなく家族と一緒に介護をするなら、その人たちの予定も入れる。そして、だれもいない時間帯について、『〇~〇時はデイサービスに頼もう』というように設計していきます。緊急時に頼める場所も用意しておきます。このように、まず自分の時間を優先して1週間のスケジュールを立てると、無理がなくなります」・﹁思いの確認シート﹂「よくあるのが、家族間の『思い』の違いです。介護をすることになったとき、どんな介護をしたいか、仕事をどうしたいかなどを事前に確認しておくことが大切です。仕事を続けたいのであればそれはなぜか。休職したいのであればそれはなぜか。『だって家族だから』では、家族のせいにしがちになります。また、介護をするにあたって不安なことも列挙してもらいます。明確にすると、アクションを考えられるようになります。同時に、介護するにあたって楽しみなことも確認します。継続するには、絶対に楽しみが必要です。例えば、『ついでにヘルパーの資格を取ろう』というのは、楽しみのよい例です。介護の経験はその後のキャリアや生き方にも影響しますので、それを自覚してほしくてこのシートをつくりました」・﹁役割確認シート﹂「家族や親せきがかかわるなどいくつか対応のパターンが考えられますので、パターン分けをして役割を確認します。例えば、介護サービスの相談役は、ケアマネージャー1人なのか、近所の人や民生委員、ほかの家族がいるのか。お金の相談役、日常の介護の相談役、自分時間はいつ取れるかといったことも、事前に確認しておくと慌てずに済みます。毎日の食事やトイレの世話も、長く続くとたいへんですので、認識しておく必要があります。『何とかなる』と考えている人が多いですが、『何とかなる』でがんばれるのは3日程度。4日目には『いつまで続くの?』となります。また、大事なのが介護にかかる費用の認識です。『私は、介護が必要になったら施設に入れてもらうからいいんだよ』といいながら、施設に入るのにいくらかかるか把握していない人も多いものです」ここまで確認しておくと、介護と仕事をうまく両立できる可能性が高まるという。従業員の困りごとに全力で向き合いトライ・アンド・エラーを継続ここまで見てきたように、同社は、「働いて

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