エルダー2021年9月号
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エルダー27FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫サツマイモを食べて長生き「お助けイモ」として凶作を救う中南米生まれのサツマイモが、日本に渡来したのは江戸時代の初期。その普及が早かったのは、調理が簡単でホクホクと食感がよくて甘みがあり、満腹感が得やすかったからです。また、単位面積当たりの収穫量も多く、育て方も比較的容易なことから、各地で栽培されるようになりました。日本は昔から天候不順の年が多く、米の不作や凶作がよく起こる国でした。そのようなときにサツマイモは「お助けイモ」として、飢餓を何度も救っています。終戦直後の食糧難のとき、学校のお弁当はふかしたサツマイモ。先生も生徒も学校の廊下を歩くたびに、よくおならが出たものですが、みんな平気でした。最近では秋から冬にかけて、焼きイモはナチュラルフード(自然食)として人気。代用食どころか、「長寿食」として注目されているのです。長寿成分もたっぷりサツマイモの切り口からにじみ出る白い乳液はヤラピンと呼ばれる成分で、便をスムーズにする作用があります。豊富に含まれている食物繊維とともに、便秘の予防や改善、それに日本人に増えている大腸ガンを防ぐうえで効果を発揮するといわれています。大腸ガンは、高タンパク、高脂肪、低食物繊維の食生活によって引き起こされることが多いことがわかっており、健康長寿に食物繊維は欠かせません。全身の免疫力をになっている元気な腸内細菌を増やすためにも、サツマイモなどからコンスタントに食物繊維を摂取することは重要です。免疫力の強化には、ビタミンCも大切な成分です。サツマイモにも豊富に含まれており、しかもサツマイモのデンプン質で包まれているために、加熱しても壊れにくいという特徴があります。ビタミンCはコラーゲン生成にも不可欠で、肌の若さを保って、しわを防ぐために重要なビタミンです。このほか、ビタミンEもたっぷり含まれています。ビタミンCとEは、どちらにも強い抗酸化力があり、体細胞や血管などの酸化、つまり老化を防いでくれる効果があります。また、ビタミンBグループの葉酸も含まれており、こちらは認知症の予防で注目されています。だからといって食べ過ぎは肥満のもと。ご用心を!335

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