エルダー2021年9月号
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エルダー33<企業プロフィール>株式会社きむら(香川県高松市)創業1907(明治40)年 生鮮食品中心のスーパーマーケット 株式会社きむらの定年は60歳。60歳以降は正社員・パートタイマーを問わず、本人に働く意欲があるかぎり年齢上限なく継続雇用しています。60歳定年以降も役職を継続できるほか、定年時の賃金水準の維持、継続雇用中の昇給制度などもあり、高齢従業員がモチベーション高く働ける各種制度が整備されています。こうした取組みが評価され、平成29年度高年齢者雇用開発コンテスト※で、厚生労働大臣表彰最優秀賞を受賞しました。内田教授に聞く 株式会社きむらのココがポイント!現場の最前線から人材育成まで、高齢従業員の活用が経営戦略のカギに スーパーマーケットを展開する株式会社きむらの強みは、同業他社の追随を許さない生鮮品売場の充実です。この売場を支えるのが経験豊かな高齢従業員です。生鮮品は新鮮さが勝負、市場で活きのいい魚や採れたての野菜を見極める「目利き」でなければ担当は務まりません。そのため、経験がものをいうこの世界で生きてきたベテランが重宝されます。 一方、会社は急成長し、人材育成が追いつかなくなっていました。ここでも即戦力として頼りにされたのが高齢従業員でした。会社は高齢従業員のいっそうの活用のため、継続雇用の上限年齢を撤廃しました。定年後の起用に加えて外部からの高齢者採用も増え、高齢従業員が会社の中核人材、成長エンジンになっています。 きむらで働く高齢従業員は最前線に立つだけではなく、次代をになう若手従業員の指導役としても活躍しています。会社の強みである生鮮品の目利き人材の育成が欠かせないからです。きむらでは高齢従業員と若手が一緒に市場で買いつけを行っていますが、このスタイルは技能伝承に効果のある「ペア就労」の実践です。 がんばっている高齢従業員が、モチベーション高く働き続けることができる仕組みも重要です。きむらでは継続雇用時の賃金が定年前と変わらず、人事考課による昇給も可能となっています。また、高齢従業員に体力負担をかけないために魚の調理現場ではオートメーション化が進んでいます。 さらに注目したいのは、事業多角化と高齢従業員の働く場の開拓を結びつけていることです。川下産業であるスーパーが、川上にある魚市場経営に多角化することで、本業を強化できるだけではなく、高齢従業員が活躍できる場を生み出しています。きむらでは企業の成長に向けた経営戦略に、高齢従業員を含めた人材確保・高度化を明確に組み込んでいます。内田 賢(うちだ・まさる)東京学芸大学教育学部教授。「高年齢者雇用開発コンテスト」(※現・高年齢者活躍企業コンテスト)審査委員(2012年度~)のほか、「65歳超雇用推進研究委員会」委員長(2016年度~)を務める。《プロフィール》マンガで見る高齢者雇用エルダの70歳就業企業訪問記解説

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