エルダー2021年9月号
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エルダー39務する唯一のボイラー技士として仕事を担当しています。毎朝ボイラーを稼働させることから、一日ごとに硬水を軟水にするため水をタンクに貯め、定期的に25㎏の塩を入れて硬度を下げるのも松田さんの仕事です。25㎏の塩が入った袋は扱いづらく、簡単な作業ではありません。初めは袋から直接投入していましたが、入れやすくするために、袋から入れ物に入れ替えて、何回かに分けて補充するように工夫をしました。また、部品が劣化しないように、不純物を取り除く薬品を機械に入れてメンテナンスを行っています。昨年までは週5日勤務でしたが、現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり週4日勤務、朝8時から午後2時までの時短勤務をしています。同社では最高齢となりますが、仕事はもう少し続けたいと話す松田さん。「いつか後任に引き継ぐことになったら、1〜2カ月、一緒に立って仕事を伝えていきたいですね。和菓子屋さんにとって、ボイラーの温度と水は生命線です。蒸気であんこを炊くので、止めてしまっては工程のすべてがストップしてしまいます。これを忘れないようにすることが一番大切です」と力を込めて話してくれました。本店長の熊田慎一さん(64歳)は、定年後は継続雇用となりましたが、以前と同じ働き方を希望し、販売担当の本店長として職務内容も変わらず、フルタイムで働いています。長年販売職を続けてきた熊田さんに、仕事のうえで一番大切なことを聞くと、「お客さま相手の商売ですから、相手の立場になって販売することです。お客さまとつながりができて、連絡をいただくこともあり、こうした人とのつながりは人生の財産です」と返ってきました。最近は仕事を少しずつほかの社員にふり分けているそうです。社員のシフト管理を各店舗に任せたり、卸業務、県外のデパートの発注、催事の販売業務といった外部との連絡窓口の役割などの引き継ぎを行っています。来年の2月に65歳を迎える熊田さん。これを機に、働き方を見直そうと考えているそうです。「気力、体力が続くかぎり、会社が求めてくれる分は受け入れて仕事を続けていきたいです。いままで通りフルタイムで働くことも選択肢の一つですが、今後の勤務時間については会社と相談していきたいです」と話してくれました。会社の働き方改革については、熊田さんが入社したときと比べると、大きく働き方が変わったことを実感しているといいます。「休暇は年間で決められた日数がありますが、希望すれば勤務日を減らすといった契約もできます。体の具合が悪いなどの理由で、契約期間中でも週2日から3日など休みを増やすことも可能です。若い人たちも働きやすいのではないでしょうか。環境がよいので、64歳まで働いてこられたのだと思います」今般の新型コロナウイルス感染症の影響は同社にもありました。一時は全店舗を閉め、再開後もなかなか客足が戻らないという事態になりましたが、この局面を乗り越えるため、高齢社員を含む全社員が一丸となって取り組んできました。「このような災害時にかぎらず、当社は贈答品の扱いが中心ですから、中元、歳暮の時期が繁忙期になり、1年のうちで変動があります。こうした変動にも、高齢社員に柔軟に働いてもらうことで対応してきました。高齢社員のみなさんは弊社にとって重要な存在ですから、これからも長く勤めてほしいと伝えています」と森岡さんは期待を語りました。 (取材・西村玲)本店長としてフルタイムで働いている熊田慎一さん

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