エルダー2021年9月号
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任意的恩恵的給付と判断した裁判例として、東京地方裁判所平成20年6月13日判決(モルガン・スタンレー証券事件)があります。この裁判例では、当該支給額について、使用者が大きな裁量を有していたことを考慮し、労務の対償である賃金には該当しないという評価がされています。任意的恩恵的給付となった場合、使用者は原則として支払い義務を負担するものではないため、従業員から訴訟を通じて支払いを求められたとしても、これを拒否することができます。一方で、就業規則などによって制度化することにより退職金の支払い義務を負担するよ退職金の性質について1退職金については、労働基準法において、支払いを義務づけられているような賃金ではなく、各社において自由に制度として用意することができ、または、制度としない自由もあります。一般的には、就業規則や労働契約で支給の義務を負担しない状態で従業員に退職金を支給するような場合、任意的恩恵的給付であるとされ、労働基準法上の「賃金」には該当しないと考えられています。退職金について、退職金支給の根拠となる規定がなく、労働契約においても退職金の支給約束をしていないのであれば、支払い義務はありません。ただし、過去の支給実績などから、退職金の支給ルールが固まっており、労使双方がその基準を認識している場合には、支払い義務を負担する場合があります。A第40回 退職金の支払い根拠、喫煙防止と職務専念義務・労働時間管理弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。2021.944知っておきたい労働法 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA& 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は&Q退職金の支払い根拠について知りたい当社には、制度化した退職金はないのですが、退職希望者から、過去に退職金を受け取った従業員がいると聞いているから、退職金を支払ってもらいたいとの要望がありました。たしかに、過去には秀でた功労者や長期の勤続を果たして定年退職した従業員に退職金として支払ったことがあるのですが、今後は退職者全員に支払わなくてはならないのでしょうか。Q1

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