エルダー2021年9月号
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よる書面などの一定の基準を定めたものとして実行されていないかぎりは、たとえ、過去に支給実績があったからといって、ただちに、退職金の支払い義務を負担することにはならないでしょう。ただし、これまでの実績が統一的な算定式ます。過去には、判例で「注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないこと」を意味すると判断されています。この言葉通りに職務専念義務を理解に基づき行われてきたことやそれが労使間の認識として齟齬がないような状況に至っている場合には、労使慣行に基づく退職金支給義務が発生することにもつながりますので、注意しておく必要があります。すると、些細な休憩すらも許されないとか、職務と並行して行うことが可能な作業などもすべて除外することにもなりかねないため、一般的には、職務の性質・内容、行為態様などの諸般の事情を勘案して判断することが適切と考えられています。職務専念義務および誠実労働義務の観点からいえば、これらの義務に違反する場合には、喫煙を制限することが可能と考えられますし、これらの義務が尽くされていない時間については労務不提供と評価することも理論上は可能と考えられます。ただし、この場合は、居眠り時間の労働時間からの除外(本誌2021年7月号参照)と同様に、実際の喫煙時間を正確に把握する必要があるため、実行するには困難がともなうでしょう。職務専念義務違反を検討するにあたっては、喫煙行為の目的およびその必要性とそれが許容される理由を考慮しなければならないでしょう。そのため、喫煙する必要性と禁止する必要性を比較していくことになります。労働時間中の若干の休息(例えば、トイレへ行くことや席に座った状態でストレッチする行為など)は、だれにとっても共通の生理現象であることや体調や健康の保持のためなど必要性があり、職務専念義務との関係においても、許容されないとは考えがたく、これを労働時間から除外するということも適切とはいいがたいでしょう。喫煙時間と職務専念義務の関係1労働契約に基づく義務として、職務専念義務および誠実労働義務があると考えられてい労働時間中における喫煙の禁止や喫煙スペースの利用制限を定めることは可能と考えられます。また、労働時間からの除外についても、労務の提供が実行できていない以上は理論的には可能ですが、実際には除外すべき時間の把握に困難がともないます。私生活における喫煙の制限は、労働契約の限界を超えており、禁止することはできないと考えられます。A2021.946従業員の禁煙を推進するうえでの注意点について知りたい従業員の健康増進を目的に喫煙者を減らすための施策を検討しています。労働者の喫煙を禁止することはできるのでしょうか。もしくは、喫煙時間を労働時間から除外することはできるのでしょうか。喫煙自体を禁止したほうが健康確保のためには望ましいと思うのですが、私生活における喫煙も禁止することはできないのでしょうか。Q2

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