エルダー2021年9月号
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エルダー3 いまの60代後半の方々は、1970年代後半に入行し、その後、オンラインシステムの急速な発展、バブル崩壊と不良債権問題への対応、規制緩和やグローバル化、業界の再編など、目まぐるしく厳しい「変化」をくぐり抜けてきました。そうした大きな環境変化を背景に、融資判断や回収手段などの業務知識にも、常に新しいものが求められてきました。 例えば融資の可否について、近年は、スコアリング※など外見の指標を重視して判断する傾向が強いですが、経験豊富なシニアはそれ以外の観点からも若手に助言をするなど、後輩の育成に貢献しています。 また、銀行業務のオンライン化が進み、お客さまと対面で接する頻度が以前ほどではなくなっていますが、そんな世の中になっても、やはり直接お客さまのお話をうかがい、ニーズを理解し、最適な提案をするという対面でのコミュニケーションが銀行業務の基本です。シニアがつちかってきたコミュニケーションのスキルは、若手にもしっかり伝えてほしいと思います。 また、業務上の必要性から、ファイナンシャルプランナーや中小企業診断士、社会保険労務士のような高度な資格を持っている方も多く在籍していますので、引き続き専門知識を活かした仕事に就いて、銀行の競争力の維持に努めてほしい。こうした役割も期待しています。 このように、変化の大きな時代を乗り越えてきたシニアの経験や高度な知識・技能を、確実に次の世代に伝承すること。これが先にあげた三つの役割に込めた思いです。これからも銀行を取り巻く環境は変わっていくと思いますが、過去の変化をどう受けとめ、どのように理解し、行動してきたか。その先輩たちの知見に学ぶことは、次世代をになう行員が、これからさらに複雑化する時代を乗り越えていくうえで、とても大事なことだと考えています。の経験を活かして貢献してほしいという要望を持っています。もちろん本人にとっても、経験のある仕事のほうがパフォーマンスを上げやすく、モチベーションを維持しやすいことは間違いありません。 シニアスタッフ行員に期待する役割としては、①経験豊富な行員として業務面で後輩のよき手本となる、②つちかった知識・技能伝承のにない手となる、そして③金融市場における競争力を維持するための高度専門家としての貢献――この3点をあげています。変化の激しい時代をくぐり抜けたシニアの知識・スキルを、若手にしっかりと伝えてほしい※ スコアリング……企業の決算書の数値や市場動向などをもとに信用を採点・格付けしたもの

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