エルダー2021年10月号
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特集令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト分野である半導体製造装置に使用されるワイヤーハーネスの製造を中心に業容を拡大してきた。現在では宮城県にも工場を構えている。創業27年と、会社としての歴史は比較的浅いこともあり、40代以下の従業員が9割以上を占めているほか、従業員の半数以上を女性従業員が占めており、女性が活躍しているのも特徴だ。主力製品である「ワイヤーハーネス」は、チューブなどでまとめられた複数の「電線」と「コネクタ部分」とで構成され、電力供給や情報伝達、制御といった、製品を構成する機器同士をつなぐ重要な役割を持つ。同社の優れた技術を支えてきたのは豊かな経験を誇るベテラン従業員であるという考えのもと、厚生労働省の若年技能者人材育成支援等事業「ものづくりマイスター制度」にベテラン従業員を登録するなど、次世代へ技術継承できる場をサポートし続けている。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ同社の主力製品である「ワイヤーハーネス」は、素材が柔らかいため作業により形状が変わることがあり、構造も複雑なことから、全自動での製造はむずかしく、最終的には必ず「人の手」によって完成させる製品である。会社発展のカギを握るのは熟練技術者の技能であり、若い世代への技能継承は、会社全体の割合としては数少ない高齢従業員に託されている。長年にわたり製造工程を担当し、多くの経験・技術を持つ高齢従業員の功績をたたえるとともに、その技術・技能の継承のために、同社は2017年7月より新たに「範師」という役職を設定した。他方、会社の急成長にともない、管理職育成が間に合わなかったことから、大企業で定年を迎えた人や、早期退職したマネジメント能力を有する高齢者の中途採用を積極的に行ってきた。その結果、現在では部長以上の管理職の過半数が転職組となり、大企業や異業種での経験とノウハウが社内で発揮されている。業務改善については、創業以来の文化として根づいている「KAIZEN」に全社をあげて取り組んでおり、高齢従業員が自ら発案し改善につながった例も多い。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善▼定年の引上げと再雇用2005年に定年年齢を60歳から65歳に引き上げた。また、定年後は希望者全員を70歳まで嘱託従業員として継続雇用する制度を導入。71歳以降は、運用により会社が必要と認めた者について、継続して雇用している。制度の改正は中高年齢層の中途採用獲得につながり、過去3年間に55歳以上の人材を8人採用している。▼多様な勤務形態65歳以上の嘱託従業員については、一般従業員と同様のフルタイム勤務と、所定労働日数または所定労働時間が少ない勤務の2種類を設定し、本人の希望に合わせて選択できるようにしている。2種類の勤務形態を導入したことで、無理なく自分の生活に合わせた勤務ができるようになった。なお、73歳の最高齢従業員(範師)はフルタイム勤務で、その熱心な勤務態度は若手従業員のよい手本となっている。(2)高齢従業員を戦力化するための工夫▼範師の役職を設定元製造部門長の嘱託従業員に、経験と技術を後進に引き継ぐ役目をになってもらうため、2017年より「範師」の役職を創出した。範師は製造技術職として勤務を続けるなかで、新人エルダー9会社外観

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