エルダー2021年10月号
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特集令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト企業の沿革・事業内容Ⅱ同社は1974年に創業。病院やビル・マンションなどの日常清掃業務をはじめ、ホテルの客室清掃業務、新築住宅の仕上げ清掃業務、アパートの退去後清掃業務などを行うビルメンテナンス業を行っている。また、清掃業のなかでも特殊技術である神社・仏閣の「木部灰汁洗い」の技術を有していることが、同社の強みとなっている。この技術は熟練職人から若手へと、着実に技能継承され、高齢社員の指導的役割が社内風土として必要不可欠なものとなっている。主なお客さまは病院や建設会社、不動産会社、ホテル・マンションの管理会社であるが、特殊技術である神社・仏閣の木部洗いは、全国から依頼が寄せられる。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ同社の社員構成は、社員数41人のうち60歳以上の高齢社員が21人(男性9人、女性12人)で、51・2%を占める。70歳以上が9人おり、最高齢は77歳である。新卒採用がむずかしい業界であり、同社の採用は中途採用が中心で、中高年齢層の中途採用も積極的に行っている。同社で働く社員の半数以上が60歳以上であるが、仕事に対する意識が高く、責任感が強いことから、業務の依頼先からの信頼も厚く、重要な戦力として活躍している。こうした経験とノウハウを持つベテラン社員が安心して仕事に従事する職場環境を整備・拡充してきた。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善▼定年制と継続雇用制度の改定2010年代半ばに社員の平均年齢が57歳となり、高齢化が顕著となってきた。従来、同社では定年66歳、70歳までの継続雇用、さらに運用で70歳を超える雇用を実施していたが、2021年4月に施行された、改正高年齢者雇用安定法による70歳までの就業確保措置に鑑み、高齢化の現状と向き合うなかで定年制、高齢者雇用制度の見直しを実施。定年年齢を70歳、継続雇用の上限年齢を75歳に改定した。継続雇用後の処遇について、賃金は定年到達時の水準を継続し、減額は行っていない。ただし、短時間勤務を希望する場合は時間比例による見直しを行う。定年到達者が、引き続き継続雇用を希望する場合は、健康面の問題がなければ原則的に継続雇用を行っている。なお、病院やホテルの清掃業務に主任として従事している正社員が、定年により継続雇用に切り替わった際には主任を外れ、一社員として引き続き業務を担当してもらうほか、ペア就労の教育係としての役割が任される。▼柔軟な勤務体制現場作業のなかでマンションの共用部清掃などは、社員の希望に合わせて勤務時間帯を固定せず、柔軟に対応している。また、病院・ホテル清掃などの常駐業務の場合、社員の急な体調不良などの休みに対しては、代行できる社員を派遣している。高齢社員にとっての心配事の一つが、体調不良や自宅での転倒などによるけがで急に休まざるを得なくなることであるが、どの現場の業務も代行できる社員がいることで、安心して休みを取ることができる。このようにエルダー29会社外観

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