エルダー2021年10月号
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働きやすい環境が整備されていることが社員の定着率を高めている。ちなみに代行社員は常駐業務のどの作業もある程度習得している。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み▼高齢社員による伝統手法の継承(ペア就労)同社は、伝統手法である「木部灰汁洗い」の技術を九州内で唯一保持している。日本の木造建築、特に神社・仏閣・古民家などは簡単に建て替えできるものではないことから、木を削ることなく建てた当初の風合いや木の香りまでよみがえらせる木部灰汁洗いの技術は、後世に残していくことが求められる。職人の技、匠の技の伝承には経験値も多く必要であるため、簡単にマニュアルにはできない部分もあり、経験豊かな高齢社員から若手社員への技術の継承が不可欠となっている。そのため、木部灰汁洗いの現場では、高齢社員と若手社員をペア就労させ、若手社員への技の伝承をOJTで行っている。木の色味や汚れの落とし具合などを現場で直接指導することで若手の技術も向上している。ペア就労では、身体負荷のかかる道具の準備や、高所での作業などは若手社員が受け持ち、作業内容の指示・指導を重点的に高齢社員に担当してもらう仕組みを確立した。ペア就労は「木部灰汁洗い」の現場だけではない。技術・経験を持つ高齢社員はさまざまな現場で活躍している。メンテナンス現場においては、お客さまとの信頼関係が大事であり、若手社員が新しく入った際にも、ベテランの社員が教育担当として一緒に働くことでお客さまが安心して清掃業務を任せられる雰囲気づくりに一役買っている。一方、ホテルの客室業務では、高齢社員は新入社員や障害のある社員の教育係として活躍している。作業時間に制約のある現場では、現場の担当者が通常業務を行いながら、新入社員や障害のある社員にゆっくりと指導する時間が取れないため、高齢社員が教育担当として個別指導する体制を整備している。高齢社員は、通常業務のなかでマニュアルにしづらい注意点などを適宜指導し、若手社員の育成に努めている。高齢社員にとっても自分が活躍できる場があることでモチベーションの向上につながっているという。また、高齢社員自身は、若手社員とのペア就労について、「孫と仕事をしているようだ」と、世代間のギャップを楽しみながら勤務している。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生▼作業環境の改善常駐業務は作業環境が現場によって異なるため、なかには負担がともなう作業がある。その一つに雑巾やモップの洗浄がある。手作業で行うと労力と時間がかかり社員の負担が大きいので、業務の依頼元と交渉して洗濯機を設置してもらったり、助成金を活用して清掃機器を購入するなどして作業負担の軽減を図っている。負荷軽減のために導入した機器の例としては、社員の要望から、「コードレスポリシャー」、2021.1030コードレスポリシャー(左)、肩かけタイプ掃除機(右)

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