エルダー2021年10月号
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特集令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト「肩かけタイプの掃除機(バッテリー式)」を導入した。コードレスとなったことから、両手が使えるようになり、転倒事故などのリスクも格段に下げることができ、安全性のアップにつながった。また、隅専用の「すみすり棒」(モップ)を使うことで、中腰での作業がなくなり、足腰などの負担軽減につながっている。作業環境の改善は、日常的に実施している巡回のなかで高齢社員などから寄せられた意見や要望をもとに、継続的に実施している。▼健康管理法令に基づいて健康診断を年1回実施しているが、その際に生活習慣病予防検診として、骨こつ粗そ鬆しょう症しょう検査を実施している。加齢により骨がもろくなり、転倒事故などによる骨折リスクが高くなるため、それを回避するとともに予防対策を可能にするためのものだ。また、希望者には産業医のカウンセリングも行っている。さらに、医師には相談しづらい仕事や人間関係などの悩みがあることも想定し、メンタルヘルス関連の資格を取得した総務部の社員が聞き役となる体制も整備した。(4)そのほかの取組みそのほかの取組みとしては、「社長・部長による定期的な現場巡回による社員のフォローアップ」があげられる。現場での作業は直行直帰が多く、会社との関係が薄くなってしまうため、定期的な現場巡回を実施している。現場巡回自体は、同業他社でも行われているが、同社の場合は、社長が積極的に参加して社員とのコミュニケーションを図っているのが特徴だ。このほか、社員の誕生日に社長の手書きのメッセージカードを添えたケーキが贈られるなど、信頼関係の構築に力を注いでいる。また、今般のコロナ禍のもと不安な日々が続くなかで、全社員に社長の手紙を添えて10‌kgの米が贈られた。(5)高齢社員の声松田明美さん(71歳)は、同業他社での勤務を経て同社へ中途入社し、今年で8年目を迎える。午前は高齢者施設、午後は病院の清掃を担当している。現場への直行直帰の業務であるため本社とのつながりが薄いものの、社長や部長が定期的に巡回してコミュニケーションをとり、フォローしているため、「安心して業務に専念できます」と笑顔で語る。(6)今後の課題同社では、「高齢者」というくくりではなく、「大切な働き手」であるという考えがベースにあり、より長く働ける環境を整備するため、将来的には定年制の廃止を検討している。同時に、高齢社員の場合は健康面などの不安があるため、健康診断や産業医によるカウンセリングのさらなる充実、作業負荷を軽減するための新たな機器類の導入なども視野に入れている。高齢者や障害者などすべての人がいきいき働ける会社づくりを目ざしていく。エルダー31病院の清掃を担当している松田明美さん

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