エルダー2021年10月号
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エルダー39えたり、ときには何気ない会話をしながら、お客さまと営業担当者の間をつなぎ、円滑な取引きを支援すること。築紫さんは、毎日お客さまを訪ねてコミュニケーションを取り、信頼関係の構築に努めています。週5日フルタイム勤務で、この業務を担当してからの2年間で、築紫さん一人で約1400人ものお客さまとの面談を実施したそうです。「ほとんどのお客さまが初対面ですので、戸惑うこともありますが、とても新鮮に感じて取り組んでいます」とにこやかに話す築紫さん。直属の上司である監査部の吉田次長は、「築紫さんが持つ力をフルに発揮してもらえるよう、新たに創出した職務です」と築紫さんの仕事を説明します。実は、二人はかつて一緒に営業部に在籍しており、当時の吉田次長は新人で、築紫さんが上司だったそうです。「そのときに、上司とはこういう存在で、プロの仕事とはこうあるべき、というものを教わりました」と吉田次長。その後、吉田次長は管理部や監査部へと異動し、いまは監査部で築紫さんの上司です。「上司風を吹かすとか、年上だからと偉ぶることはまったくなく、築紫さんは現在の自分の役割と業務を十分に理解し、仕事に邁進しています。私がやりにくいと感じたことは一度もありません。高齢者雇用が進み、今後はこういう年上部下、年下上司がさらに増えるでしょう。『年長でも変わらなくてはいけない』ことを実践しており、築紫さんはその面でも私や後進にたいへんよい手本になってくれています」と吉田次長は築紫さんについて語ります。築紫さんは、「吉田次長が私の仕事ぶりをしっかり見てくれていることが、高いモチベーションの原動力となっています。自分の役割を認識し、会社からの期待も感じて仕事に臨むことができ、お客さまと会社にどれだけ貢献できるかを考えて取り組んでいます。雇用上限の70歳を目ざして働けるようにがんばりたいと思います。いままで以上にお客さまと真摯に向き合い、業務にあたっていきます」と抱負を語ってくれました。継続雇用社員のやる気を引き出すには二段階の継続雇用制度により高齢社員のさらなる活躍が見込まれるなか、朝香総務課長は、「現在の継続雇用制度には昇給の仕組みがないため、営業職以外でも自らがんばりたいと思える仕組みづくりが必要」と課題をあげました。村上プランナーは、「例えば、加齢による変化をふまえた継続雇用社員のための評価制度を設ける、という方法があります。若い社員と同じ評価制度ではなく、高齢社員のよさが活かされる評価制度を設けることも一案です」と答えるとともに、今後も同社の高齢者雇用の取組みを支援したいと伝えていました。朝香総務課長は、「スマートフォンなどの情報端末が幅広い世代に浸透し、今後はネット証券が伸びていくと考えています。一方で、『顔を見て相談したい』というお客さまは、これからも必ずいらっしゃいます。当社でそのニーズに応えていくためには、社員の質を高めることが重要です。当社の財産は人です。高齢社員には、知識や経験を活かして活躍してもらい、かつそれを後進に継承してほしい。そして、お客さまと社員を通じて、今後も感動の輪を広げていきたいと思っています」としめくくりました。 (取材・増山美智子)お客さまと面談した内容をふり返り、パソコンで記録する築紫博幸さん

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