エルダー2021年10月号
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を確保することが望ましいといえる場合もあると思われます。自社の業務内容をふまえて、変更すべき職が、法的にいかなる性質を有するかによって、その取扱いが変わるため、注意が必要です。まず、一方的な労働者による退職または辞職の意思表示というものがあります。「期間の定めがない雇用契約」について、労働者は、いつでも解約を申し入れることができ、申し入れから2週間経過することで、雇用契約を終了させることができます(民法第627務内容や責任の範囲、変更の範囲を検討し、適切な裁量の範囲で定年後再雇用の条件を提示するように心がけてください。条)。使用者から雇用契約を終了させる場合は、解雇権濫用法理の適用があったり(労働契約法16条)、少なくとも30日前の解雇予告が必要である(労働基準法第20条)などの各種規制がありますが、労働者からの一方的な退職の意思表示には、これらの規定は適用されません。そして、一方的な退職の意思表示は、使用者に到達した後は、撤回ができないと解釈されています。したがって、一方的な退職の意思表示である場合には、撤回して復職を希望されたとしても、撤回に応じる義務はないといえます。なお、以上の整理は、「期間の定めがない雇用契約」に関するものであり、「期間の定めがある雇用契約」の場合には、たとえ労働者からの退職の意思表示であっても、いつでも解約できるわけではなく、「やむを得ない事由」がある場合にのみ解除することができるものとされています。したがって、期間の定めがある雇用契約(典型的には契約社員)の場合は、一方的な意思表示で退職が確定するわけではありませんので、次にふれる合意による退職が成立していなければ、退職の効果は確定しません。合意による退職について2労働者からの退職の意思表示としては、一一方的な退職または辞職の意思表示1理由はさまざまですが、労働者から使用者に対して、退職や辞職の意思が示されることがあります。相談内容のように、後日の撤回が生じたときに、これに応じなければならないか否かについて、労働者による退職の意思表示退職の種類を見定めて対応する必要があります。撤回が可能であるか否かも退職の種類によって若干異なるため、発言内容や状況もふまえて判断しなければなりません。A2021.1046労働者からの退職の意思表示がどのような取扱いになるのか知りたい従業員から、労働環境が改善されないことを理由に、自ら退職の意思が示されました。特段の返答をしていなかったのですが、翌日以降出社してこなかったので、退職する意思が固いものとみて、特段の対応をせず、退職したものとして取り扱おうとしていたところ、本人から退職の意思を撤回する旨の連絡がありました。すでに退職の意思を受け取っていたので、退職の意思を撤回するといわれても、復職させるつもりはありませんが、問題ないでしょうか。Q2

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