エルダー2021年10月号
53/68

■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー51つ深夜勤務(⑤)の状態となります。なお、ここに残業とあることから、時間外労働は一般的に「残業」と呼ばれます。時間外労働には手続きが必要もともと労働は最低限、法定労働時間内に終わらせるべきと考えられており、これを超えて労働させるには、会社と労働者の過半数で組織する労働組合または過半数を代表する労働者代表との間で36(サブロク)協定というものを結び、所轄の労働基準監督署(労基署)に届け出る必要があります。36協定とは労働基準法第三六条に基づく「時間外・休日労働に関する協定」をさします。労働基準監督署は、労働基準法などを会社が遵守しているかを監督し、問題があれば調査・指導する機関のことです。 本連載、第11回の「働き方改革」でも触れた通り、労働者の健康管理、ワークライフバランスの促進、生産性の向上などの観点から、長時間労働の抑制が国や会社をあげての重要課題と位置づけられました。そこで、2019(平成31)年4月(中小企業は2020〈令和2〉年4月)から、原則月45時間・年360時間の時間外労働の上限規制が設けられることになりました。ただし、臨時的な特別な事情があって、会社と労働者が合意すれば年6カ月まで、時間外労働が年720時間以内などの制約のもと月45時間を超える労働が可能となりますが(特別条項)、この場合も36協定が必要となります。給与算定には注意が必要法定外労働時間で働いた分については、基準となる給与に一定割合を増やして支給する割増賃金が必要となります。通常よりも多くの給与を払うことで、会社側には時間外労働の抑制、労働者側にはインセンティブ機能があるといわれています。どの程度を割増しするかは、労働基準法上定めがあります。また図表を確認していただきたいのですが、法定時間外残業(④)は基準となる給与の25%、法定時間外残業が月60時間を超える場合には50%、法定時間外残業かつ深夜勤務(⑤)は50%、深夜勤務が所定労働時間内の場合には25%となります。法定時間内残業(③)は会社が法定労働時間よりも有利な条件で設定した結果のものであるため、割増せずに所定労働時間を延長した分の給与を支給すれば足ります。なお、これらの割増率は最低ラインであるため、労働者のモチベーションなどを考慮し、より高い割増率で支給することも可能です。割増率は基準となる給与に対して乗じることで計算しますが、ここでいう基準となる給与には家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。注意が必要なのは、これらの手当は家族数や交通費・距離や家賃に比例して増減する支給方法であることです。一律支給の場合には基準となる給与に含める必要があります。この点が正しく運用できていない会社が散見されますので、しばらく人事制度を見直してこなかった会社については、これを機会に細かくチェックしてみることをおすすめします。時間外労働は、会社と労働者間の紛争にもなりやすいテーマです。時間外労働分の給与が支給されていない未払い残業代や、長時間労働による健康障害などの問題が報道でもかなりの頻度でみられます。厚生労働省や都道府県労働局などが発行している資料などで、より詳細な確認や弁護士や社会保険労務士等の専門家のアドバイスを受けて法令遵守をするとともに、そもそもの時間外労働をなくしていく全社的な取組みを行うことが重要です。☆  ☆今回は「時間外労働」について解説しました。次回は「休日・休暇」について取り上げます。

元のページ  ../index.html#53

このブックを見る