エルダー2021年10月号
54/68

70歳就業時代、組織におけるシニア社員の役割創造とは?〜「シニア人材〝役割創造モデル〞調査」で明らかになった、再雇用シニア社員の活躍プロセスと上司の果たす役割・行動について〜70歳就業法における期待と不安高年齢者雇用安定法の改正で、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となりました(通称「70歳就業法」2021〈令和3〉年4月施行)。2013(平成25)年改正では60〜64歳の就業率が高まった(2013年58・9%↓2017年66・2%※1)ことをふまえると、今後は65歳以降の就業率上昇も予想されます。政府は高齢就業者数の伸びには高齢者のスキルアップ、健康維持の促進、就業しやすい環境整備を進める必要があるとしています※2。これはわが国の高齢者の高い就業希望率※3もふまえると望ましい状況であるといえます。一方、受け皿となる企業側の状況を見ると、65歳までの雇用確保措置は99・9%が実施済み※4でありつつも、多くの企業でシニア社員増加が見込まれ※5 ※6、課題が顕在化しています※7。具体的には「処遇の低下・役割の変化等によるモチベーション低下」、「自社において活用する職務・ポストが不足」などがあげられる※8一方、シニア社員は職務のやりがいを求めている傾向がみられ※9 ※10、企業と個人の間のギャップを埋めることが大きな課題といえるでしょう。70歳就業法への企業対応に関する調査※11によると、定年後再雇用が「すでに実施」、「検討中」と合わせて86・1%を占め最も有力な選択肢となっており、働く個人に対する調査※12では、65歳以降の希望する働き方として「現役時代と同じ会社で正規以外の雇用形態で働く(42・4%)」が第一位と示されています。つまり、「定年後再雇用」が現時点で最も現実的な就業継続のモデルと考えられます。しかしながら上述の課題を持ち越しては、組織の生産性と個人のキャリアの停滞が一層拡大してしまうでしょう。シニア社員活躍の新しいパラダイム 〝役割創造〞私はさまざまな企業に対するキャリア自律支援に関するコンサルティングを行っています。シニア社員活性化に関するご支援を通して、「会※1  総務省「労働力調査」(2018) ※2  内閣府「日本経済2018-2019~景気回復の持続性と今後の課題」(2019)※3  内閣府「令和2年版高齢社会白書」(2020)では、働いている60歳以上の人の9割近くが70歳以上まで働きたいと考えていると報告している※4 厚生労働省「令和2年高年齢者の雇用状況集計結果」(2021)※5  HR総研「シニア活躍支援に関するアンケート調査結果」(2021)では、10年後には半数の企業で「50代以上の社員数の割合30%以上」という結果社がポスト・職務を提供する」ことから「経験豊かなシニア社員自らが役割をつくり、価値発揮の方法を提案する」というパラダイムに転換する〝役割創造〞というコンセプトを考えるに至り、多くの企業から共感を得たことから、概念に留めず実現プロセスを明らかにすべく法政大学大学院の協力を得て共同調査※13を行いました。シニア社員の職場での役割創造プロセスと上司の行動が与える影響のメカニズムを解明することを目的とし、協力を得た14社(製造業・サービス業・情報通信業・金融業・インフラなど いずれも大手)の人事部から「職場の中で役割創造している」として人選されたシニア社員21人(再雇用者・役職定年者)とその上司18人に対してインタビュー※14を実施しました。調査結果で明らかになった再雇用シニア社員の役割創造プロセスと上司の働き調査では、再雇用者の活躍プロセスと効果的な上司のかかわりが明らかになりました(図表1)。特別寄稿株式会社ライフワークス コンサルティング事業統括ゼネラルマネージャー 兼 シニアコンサルタント 野村 圭司

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る