エルダー2021年10月号
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2021.104など空気を読みながら柔軟に対応する能力も大切です。そのためには慣れも必要です。私たちは予行演習として早めに副業やボランティアなどで社外活動することをおすすめしています。三つ目は「何のために働くのか」という心構えです。お金だけのためのセカンドキャリアの継続は厳しいといえるでしょう。「社会との接点を持ちたい」など、どういう自分になりたいのかをイメージし、その自覚と覚悟を持つことが必要です。 終身雇用が減った韓国では、早期退職者が増えたとき、一時期コンビニエンスストアよりも焼き鳥の屋台が増えたことがあったそうです。しかし、増えると過当競争になりますし、結局ほとんどが廃業したと聞いています。長く会社員としてやってきた人が、いきなり事業者として独り立ちしてもうまくいきません。そうならないためにも、会社員時代に事前の準備をしておくことが大事です。―反対に、企業がそれまで雇用してきた従業員をフリーランスとして活用し、活性化を図っていくためには何が必要でしょうか。平田 フリーランスになる前の準備や助走期間が必要ですが、社員の副業を解禁するなどして、会社の外で活躍する機会をつくれるような支援が重要です。それによって給与とセーフティネットが保障された状態で、リスクなく自分の市場価値を試し、経験を積むことができます。企業にとっても、社外の活動を通じて視野や人脈が広がり、イノベーションの種を持ってきてくれる可能性もあります。役職定年などでモチベーションが下がる50代から副業を始めた人が、活き活きと働くようになり、それが自信となって「本業もがんばろう」というケースも多くあります。自分の価値を再確認でき、後輩世代にもよい影響があるでしょう。大手企業のなかには50代以上に限定し、副業を解禁しているところもあります。―シニア人材が長く元気で働き続けるための課題・展望についてお聞かせください。平田 政府がフリーランスの拡大や支援、副業解禁、70歳就業確保などの政策を推進している背景には、高齢者が自立し、できるだけ自助でがんばってほしいという思いが強くあるのでしょう。しかし、企業だけでは、そのすべてを支えることはできませんし、永遠に自助で生き続けられるわけでもありません。人生100年時代といわれても、いつかは仕事の引き際や引退の時期が訪れます。そうした際のセーフティネットは絶対に必要です。 一方で、個人の側も自分で引き際を決められるのが理想ですが、これは意外とむずかしいものです。もちろん、体力や情報感度、判断力などいろいろな部分で衰えを感じる時期がくれば、どこかで自分の引き際を決めないといけません。そこに気づかずにいると、いつの間にか仕事は減っていくでしょうし、新しいやり方に対応できなくなれば、厄やっ介かい者扱いされかねません。それはそれで悲しいことです。自分でしっかりと引き際を見極めて、そのためのマネープランなどの備えをしておくことは、フリーランスを問わずとても大事なことだと思います。社員への副業解禁は本人だけではなく企業にとっても大きなメリットになる(聞き手・文/溝上憲文 撮影/中岡泰博)プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事平田麻莉さん

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