エルダー2021年11月号
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従来は現場での新人研修は店舗のチーフ、またはトレーナー制度により本社から出向いて指導してきたが、店舗の高齢従業員が中心になって新人教育を行うこととした。指導役の高齢従業員は、会社のマニュアルにプラスして自らの経験から得たポイントを若手に伝授している。高齢従業員にとって後進の指導はやりがいとなり、「若い世代との接点ができて楽しく仕事ができている」という声が聞かれている。▼「リリーバー制度」の導入各店舗に教育係である高齢従業員を配置しているものの、すべての店舗に配属されているわけではないため、本社所属の高齢従業員が「リリーバー」として近隣の店舗に出向き、各担当部門で指導を行う「リリーバー制度」を新設した。水産、惣菜、チェッカー、食肉の各部門のベテラン40人が「リリーバー」として活躍している。最近は新型コロナウイルス感染症における感染者の濃厚接触者が出勤停止になった際に、リリーバーが応援に入るなど、制度の有効性が高まっている。▼IT機器を扱えるよう徹底指導システムの変更などでIT機器操作が必要になった従業員に対し、各部門トレーナーや、リリーバーが随時指導にあたっている。機器操作を苦手とする高齢従業員には、マンツーマンで時間をかけて、一緒に機器を操作しながら、くり返しわかるまで指導することで、多くの高齢従業員が使えるようになった。3年前にタブレットを使って在庫をチェックし、その場で発注を行う仕組みを導入した。従来からパート従業員が各部門の商品発注を行っていたが、新しい発注システムを導入した際の、高齢従業員の拒否反応はたいへんなものだったそうだ。そこで全店舗で説明会を開き、マニュアルを整備したうえで、一人ひとりに時間をかけて教えたことが功を奏した。特に店舗所属の女性の高齢従業員は、季節の天候の特徴や、学校・地域行事を熟知しているため、発注精度が高い。品切れを起こさず、発注ロスを抑えることができる高齢従業員がIT機器を操作して発注を行うことにより、効率性と生産性が格段にアップした。今後は、給与明細、年末調整など、スマートフォンで確認できるように、近年中に電子化によるペーパーレス化を進め、経費削減につなげる予定である。▼年齢制限を設けない昇格制度昇格要件は主に資格取得であり、一切年齢制限を設けていない。チーフ職の昇格要件はスーパーマーケット検定2級取得、店長マネージャー職の昇格要件は第2種衛生管理者取得となっており、年齢に関係なく、昇格を目ざせる環境である。60歳以上の店長職も多い。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み▼連続休暇制度の導入2019年から従業員の働き方と休み方の改善のために、4〜9月の上期、10〜3月の下期にそれぞれ有休を含む3連休を取得する取組みを始めた。以前、現場では有休が取りづらい雰囲気があったが、この制度を取り入れてから、格段に取得しやすい環境になり、連休取得率100%を達成している。有給休暇取得により従業員がリフレッシュすることで、業務の効率化に結びついている。従業員からは「連休がもっとほしい」という声が上がり、2021年から上期、下期ともに5連休に期間を延長した。店舗で働く全員が5連休を取得できるようシフトを調整し、シフトの穴はリリーバーが応援に入ることで対応している。▼労働災害防止の取組み安全衛生面では、60歳超の高齢従業員の転倒事故が多く、課題となっていたという。高齢従業員は少しの段差でつまずきやすく、転倒して打撲や捻挫を負うケースが発生していたことから、事故防止のために月1回の店長会議で危険箇所の注意喚起のための掲示をするよう求めるなどの対策を実施。しかし、注意した内容がパート従業員まで行き渡らないこともあり、裾野を広げてチーフ会議でも注意喚起するようにした。労働災害は、特に惣菜部門の転倒と切せっ創そう事故が目立っていた。厨房では大量の揚げ物や焼き2021.1110

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