エルダー2021年11月号
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定年年齢はいずれ上がっていくことを見据えて実施した。当時、50代の社員はわずかで、社員にとっては実感の持てない定年年齢の引上げだったそうだが、現在では、「安定した給与をもらいながら70歳まで働ける環境が整っていることはありがたい」という社員の声が聞かれるようになった。また、定年を70歳としたことにより、ほかの企業を定年退職した人を採用しやすくなった。大企業に勤めていた人や、モノづくりとは異なる仕事をしていた人なども採用している。会社と社員双方の納得性を重視した雇用契約を交わすことにより、だれもが前職を引きずることなく、「チームミフネ」の一員として活躍している。▼再雇用制度の明文化70歳超の高齢社員を、一定条件のもと有期契約の嘱託社員やパート社員として再雇用している。以前は定年後の再雇用について就業規則などに明文化することなく、事務的な面談のうえ、再雇用を行っていた。これを2020年に改め、定年後再雇用の契約更新方法を就業規則に明記した。なお、再雇用の上限年齢は定めていない。また、役割や働き方については、本人と会社の双方の納得性を高めるため、契約期間を3カ月間とし、更新時に社長と直接面談し、本人の健康状態や勤務形態の希望、通勤や仕事上の問題点を話し合い、双方が納得して契約の延長や退職を決めている。契約期間を3カ月間とした理由について、梅村社長は「健康への配慮もありますが、社員は通勤に車を使用しており、朝夕のラッシュと重なります。そのため、20~30分の運転を社員が不安に思うことがあるのではないか、家族が心配しているかもしれない、そんなことを3カ月ごとの面談で話すことにより、ふだんから話しやすくなるだろうと考えました」と話す。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み▼3カ月ごとの面談契約更新時の面談は事務的なものではなく、仕事に対する思いなども含めて梅村社長が高齢社員の話を傾聴し、時には悩みに寄り添い、高齢社員の働く意欲を引き出している。希望する勤務時間などにきめ細かく対応していることも、長く働きたいという意欲につながっている。▼道具を工夫して仕事を継続社員の声を聞き、道具を工夫するなどして安全の確保、生産性の向上に取り組む改善チームを設置している。高齢社員のための工夫では、例えば検査業務は視力が低下するとむずかしくなるが、一目で個数が確認でき、製品が見やすくなる箱をつくり、仕事が続けられるようになった。▼「チームミフネ」の一員として情報を共有高齢社員を含めて社員全員に常に、経営方針や受注情報などを伝えることで、全員が「チームミフネ」の一員として会社経営の一端をになうという意識と、意欲を持って仕事に取り組める風土の醸成に努めている。朝礼などには全員が参加し、品質、納期、会社の経営状態など何も隠すことなく伝えている。▼良好な職場の雰囲気を醸成社員が親睦を図る機会を随時設けており、高齢社員も一緒に楽しんでいる。また、梅村社長は毎朝7時に出社して二つの工場をまわり、全社員とあいさつを交わし、時には声をかけて体調などを気遣い、話をしやすい職場づくりを進めている。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み▼高齢になっても働ける仕事の創出従来は、高齢になってもそれまでと同じ仕事を継続していた。しかし、加齢による身体機能の低下などから、体力や仕事能力の低下が見られることも多くなる。そこで、安全を考慮し、65歳以降はメインのラインを外れて、主に改善チームとして社内の声を聞き、道具の改善や仕事のやり方を工夫する役割をになっている。70歳を超えると主にバックヤードの仕事をにない、例えば、製品を収納する箱の整理や運搬などオフラインの仕事を切り出して、高齢社員が安全に長く働けるようにしている。▼個人の事情に配慮した柔軟な勤務体制3カ月ごとの更新時の面談では、勤務日数や2021.1114

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