エルダー2021年11月号
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特集令和3年度 高年齢者活躍企業コンテスト紀にわたり安定した経営を継続してきた。官庁系の建設工事が9割を占めており、民間工事の案件としては、私立学校やマンション、幼稚園の建設などがあげられる。組織体制としては、土木部、建築部、営業部、経理部、総務部・安全環境部の5部門で構成される。一般的に建設会社の間接・直接部門の人数比は2対8となるが、同社では4対6の比率となっている。間接部門の比率が高いのは、グループ企業が受注した案件の事務業務を同社がになっているためである。ただし、施工管理者などの技術者は元請の社員であることが要件となることから、同社またはグループ企業内で該当者が不足する場合は、出向・転籍により、グループ内で人材の需給調整を行う。このように柔軟に人材を手当てできることも安定経営の要素となっている。高齢化の状況、職場改善等の背景と進め方Ⅲ2021(令和3)年4月現在の同社の社員数は26人で、平均年齢は50歳。60歳以上は7人在籍し、60~64歳が1人、65~69歳が2人、70歳以上が4人となっている。最高年齢者は74歳である。同社にかぎらず、建設業界は慢性的な技術者不足の状況にあり、中途採用によって人材を調達しているのが現状であるが、資格保有者の採用はむずかしくなっている。もちろん、土木・建築学科系の新卒採用にも力を入れているが、建設業界全体の人気が低いため、採用に苦戦している。現在、20代の若手社員が3人在籍しているが、未経験の中途採用者のため、技術者として一からていねいな育成に取り組んでいる。施工管理業務は、業務内容が多岐にわたり、監督者として一人前になるには5~10年の時間を要することから、未経験者の早期育成も経営上の優先課題となっている。一方、仕事の受注量およびサービスの質は、社員の技術・技能に左右されることから、同社にとって経験豊富な高齢社員は不可欠な存在で、貴重な経営資源となる。このため、同社では「安全」と「健康」を第一に、意欲ある高齢社員が生涯現役で活躍し続けることができる会社を目ざしている。改善の内容Ⅳ(1)制度に関する改善▼定年・継続雇用制度と運用状況2020年に定年年齢を60歳から65歳に引き上げ、65歳以降は雇用上限年齢を定めず、1年ごとに更新する継続雇用制度を導入した。定年後の社員区分は嘱託社員となる。就業規則では、定年後の雇用を継続する基準として、「継続雇用を希望し会社が承認した場合」と定めているが、これまでこの基準に満たず退職した者はおらず、定年後の再雇用の契約更新を行わなかった者もいない。同社は、社員の話をていねいに汲くみ上げ、社員が求める職場環境をつくり上げることで、事業運営を成功に導きたいと考えており、取締役自らが社員の希望や相談を受ける窓口となっている。また、定年到達時および契約更新時には、取締役クラスが面談を実施し本人の意向を聞く機会を設けており、長く働いてもらいたいという会社の意向を伝えている。定年年齢を引き上げたことで人手不足の状況を緩和でき、高齢社員にとっても生活設計の見通しが立てやすくなったと歓迎されている。▼賃金制度改革嘱託社員の基本給は定年到達時と同額としたが、これは最低水準を保障するものに過ぎないエルダー17会社外観

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