エルダー2021年11月号
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ことから、個々の労働契約では、実際に個人の成績などの評価をふまえて、基本給に加算している。また、賞与は定年前の社員と同様に支給し、算定方法もまったく同じであり、企業業績と人事評価結果に基づいて決める。定期的な賞与は年2回支給するが、このほかに追加して支給することもある。(2)高齢社員を戦力化するための工夫▼人事考課制度の導入当初、人事評価は個人目標を設定し、その達成度を主体に行っていたが、制度運用の煩雑さなどから人事考課制度に変更した。特に個人目標の設定は高齢社員の意欲向上につながらず、むしろ少々足あし枷かせとなっていたが、人事考課制度への変更は業務に幅をもって臨むことができることから、高齢社員のモチベーションを向上させた。現場を持つ技術者の場合には、発揮能力と執務態度の二つの視点から評価される。発揮能力とは「工程意識」、「原価意識」、「品質/環境意識」、「安全意識」の四つであり、執務態度としては主に上司との意思疎通やリスクテイク、法令順守の姿勢が評価される。▼指導者手当の支給経営上の課題の一つに、若手社員の早期育成がある。現場の規模が大きいときは、先輩がいる現場に配置して経験を積ませる工夫を行うと同時に、高齢社員からの指導が円滑に進むように「指導者手当」を支給することとした。この指導者手当は、若手社員との意思疎通を図るための費用助成を目的としており、コーヒータイムなどの休憩時にかかる費用に充ててもらえるようにした。日ごろのコミュニケーション不足を補うものとして高齢社員、若手社員双方から好評の声が上がっている。▼公的資格の取得助成所属部門で必要となる公的資格の取得費用は会社が負担している。また、最近新たに設けた助成制度として、所属部門の主幹業務と異なる資格を取得した際の報奨金制度がある。目的は、挑戦意欲と学習意欲の喚起にある。例えば、土木部門に在籍する社員が必要な実務経験を積み、一級建築士の資格を取得した場合には、35万円の報奨金を支給する。報奨金の対象となる資格は、現在11種類あるが、これは暫定的なものであり、今後、社員の申請をもとに増やしていく予定である。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み▼受注時の相談体制の整備新規工事の入札へ参加するにあたっては、人員配置などさまざまな事項を検討するが、これは経営戦略にかかわる機密情報のため、通常は社員に開示することはない。ただし、その案件に高齢社員を配置することを予定している場合には、入札前に高齢社員に情報を開示し、意見交換を行っている。これは、高齢社員に安心・安全に働いてもらうためのもので、現場での業務はもちろん、移動距離なども高齢社員には負担要因となる。高齢社員が現場で無理をして健康を害することがないよう、事前の意見交換は不可欠である。▼新規事業の設置同業他社と連携を図り、4社合同で事業組合の設立準備を進めているが、その目的は、規模の大きいPFI※事業を受注することにある。PFI事業の受託者は、公共工事を請け負って施設や設備の指定管理者となる。指定管理業務は管理業務が主となるため、施工管理業務よりも作業負荷は軽くなる。施工管理者の業務範囲は広いため、当該業務のスキルや経験を持つ高齢社員は、指定管理業務も問題なく遂行できることから、新規事業は健康で長く働ける「新職場」になることを視野に置いている。また事業組合には高齢社員を配置する予定である。▼健康管理法定外検診として、会社負担で成人病検診の受診機会を設けている。そのほか65歳以上で希望する社員には、インフルエンザの予防接種時に肺炎球菌ワクチンも接種することとしている。ワクチン接種は対象者の全員が希望しており、高齢社員に安心感を与えている。また、禁煙についても全社をあげて推進している。20年前から本社ビル内を全館禁煙とし、社用車もすべて禁煙としている。※ PFI……Private Finance Initiativeの略。公共施設などの建設・運営・維持管理などを民間の資金や経営・技術的ノウハウを活用して行う手法2021.1118

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