エルダー2021年11月号
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方や水準は基本的に変わらない。「仕事量を減らすならともかく、基本的に同じ仕事をしてもらうのがその理由」(石田主任)というシンプルな考え方だ。そのため、仕事へのモチベーションも維持しやすい。▼短時間勤務制度の導入定年の引上げなどとあわせて、本人の希望に応じて1~3時間の勤務時間短縮措置を講じる短時間勤務制度を導入した。実際には、みな、通常の従業員と同じようにフルタイムで働いているが、この制度があることで、「今後、もし事情が生じても働き続けられる」という安心感が生まれている。(2)意欲・能力の維持・向上のための取組み▼研修会・講習会の実施本人の希望がないかぎり、基本的に定年後も同じ職種を継続するので、やり慣れた仕事を続けることができるが、その場合も、新しい技術を吸収し、アップデートしていく必要がある。そのため、定期的に研修会や講習会を開催している。高齢従業員が新しいことを学ぶのに後ろ向きになるようなことはなく、若手と一緒に学び、新しい機械が入れば見て触って使い方を覚える。同社には学習する文化が根づいている。▼若手従業員への技術伝承ベテランの技術や知識を若手に伝承するため、現場では、工事着手から完成までのすべての期間において、高齢従業員と若手従業員がペアを組みOJTを行っている。ペアを固定せず、その都度組合せを変えて、いろいろな人から学べるようにしている。この仕組みは、若手の技術力向上に寄与するだけでなく、教えるベテランの側にとっても張合いが持てるという。(3)雇用継続のための作業環境の改善、健康管理、安全衛生、福利厚生の取組み▼職場環境の整備建設現場は身体的負担の多い職場であるため、新しい機械も積極的に導入し、年齢にかかわらず働きやすい職場環境を整備している。例えば、体力的に負担の大きい草刈り業務では、リモコンで操作できる大型草刈機を導入。足場の悪い場所や広範囲で草刈りを行う負担を軽減するとともに、作業効率や安全性を大幅に向上させた。▼健康管理健康管理の面でも、高齢従業員だけのために特別なことをするのではなく、全従業員が健康に働ける状態を目ざしている。定期健康診断をしっかりと実施するほか、インフルエンザ予防接種も全従業員に全額会社負担で行っている。(4)高齢従業員の声こうした取組みをしてきたことで、現場監督、作業員、運転手など、職種にかかわらず、65歳を過ぎても多くの人が勤務を継続している。運輸部の古ふる永なが典のり夫おさんは、現在73歳。地元で生まれ育ち、さまざまな職場で働いてきたというが、ほかの土木会社に勤めていたときに同級生に誘われ、1972(昭和47)年、24歳のときに同社に入社した。来年で勤続50年になる大ベテランだ。初めの二十数年は長距離輸送を担当し、その後は10‌tのダンプ車に乗務し、アスファルト合材や土砂などの運搬を行っている。古永さんが現場に届けた合材により、多くの道路が整備されてきた。一つの会社で50年も勤め続けるというのはたいへんなことだが、古永さんは、「辞めたいと思ったことはないですね」という。当時の定年制によって63歳のときに定年となり、継続雇用されて10年になるが、いまも通常の従業員と同じ1日8時間のフルタイム勤務を続けている。働く意欲を持ち続けることができた理由の一つは、「運転するのが好きだから」。そして、もう一つが「この会社が好きだから」。「私がここ2021.1122高齢従業員の作業負担軽減のため導入しているリモコン式大型草刈機

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