エルダー2021年11月号
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特集令和3年度 高年齢者活躍企業コンテストまで働き続けられたのは、会長の人柄と会社のおかげです。若いときは会社に迷惑をかけたこともありましたが、いろいろと助けてくれました。だから、会社のためにがんばろうと思いました。会社に感謝です」と古永さんは語る。元気の秘訣は、好き嫌いなく何でも食べること。長距離輸送をしていたときは手積み・手降ろしの作業もあったが、現在担当しているダンプ車の場合はレバー一つで行う操作なので、体力面での問題もない。ダンプ車には一人で乗るが、仲間とともに数台で現場に向かうことも多く、そんなときは無線で連絡を取り合いながら現場に行くそうで、従業員同士の仲もよい。新しく入ってきた人にはていねいにやり方を教えるが、「みんな、覚えが早いです。2~3回連れて行けば、あとは自分で動いてくれます」という。古永さんは、普段から若手に「わからないことがあったら何でも聞いてください。聞くことは恥ずかしいことではないから」と伝えている。古永さんの温かな雰囲気もあり、新人が相談できずに困ることはないそうだ。「若い人と意見の違うところもあるけれど、そこは若い人に合わせないといけない面もある。注意しなければならないときはいいますが、なるべく本人のやりたいようにやってもらうほうがよいです」という考え方で見守っている。今後については、「会社においてもらっている間は、いままで通り事故のないようにと心がけています」ということで、毎朝、今日もがんばるぞと気を引き締めて仕事に向かうそうだ。(5)今後の課題同社では、今後も長く働き続けられる制度・環境の整備を行っていく。将来的には、定年の廃止も視野に入れている。実際に74歳で元気に働いている従業員もいて、年齢にこだわる必要はないという考えだ。一方で、髙山社長は、「若い世代にも給与を反映させないといけませんので、そのバランスはこれからの課題です」と指摘する。同じ出勤日数・労働時間で給料が下がるとモチベーションに悪影響があるので、そうではなく、出勤日数を減らしてその分処遇を見直すという形はあり得るという。いずれにしても、貴重な人材に長く元気に働いてもらう方向で検討していく考えだ。いまも取り組んでいる従業員と社長とのコミュニケーションは、今後も重視していく。「3年前に私が社長になってから、雇用継続をする際に全員にヒアリングを行っています。厳しいことをいうわけではなく、気軽に話をして、意欲があれば引き続き働いてもらいます。みんなにいっているのは、『体を壊して引退するのではなく、その後の余生も元気よく過ごしてほしい』ということです」と髙山社長は話す。また、同社は、他社を定年退職した高齢者も積極的に採用するが、その面接でも、髙山社長が本人とよく話をし、どうすればその人が活躍できるかを考えることを大切にしている。「その人のよいところが必ずあります。例えば、営業職をしていた人が作業者を希望してきた場合、ただスコップを持って作業をしてもらうのでは、その人も面白くないだろうし、当社も面白くない。その人がやってきたことが活かせるポイントを探ります」という。建設業界では寡黙な人が多いというが、「どうすれば話をしてくれるかと、いろいろな手を使いながら従業員と向き合っています。相思相愛になれば、仕事もうまくいきます」という髙山社長。経営トップが一人ひとりと信頼関係を築くために努力を惜しまないことが、同社の高齢者雇用がうまくいっている最大の理由といえるだろう。エルダー23来年勤続50年を迎える73歳の古永典夫さん(右)と髙山正樹代表取締役社長(左)

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