エルダー2021年11月号
4/68

2021.112一般社団法人定年後研究所 所長/キャリアコンサルタント池口武志さん長年管理職を務め、50代で関連会社に初めて出向しました。出向先の会社は経営コンサルティングや社員研修などを手がけており、ある意味それまでとは畑違いの仕事でしたから、私もマインドセットやキャリア観の見直し、学び直しを迫られてきました。当研究所はこの会社の全額出資で設立された組織です。私も中高年サラリーマンの当事者の一人として、豊かなシニア人生の創出に役立つ調査・研究や情報発信を行っていきたいと、自らも夜間の大学院で老年学を学びながら調査・研究にたずさわっています。―現在の高齢者雇用の現状についての考えをお聞かせください。池口 日本の高齢者の労働力率は、欧米諸国に比べて高いといえます。2018年の65歳以上の男性の労働力率は、日本では34%ですが、米国は24%、フランスは4%です※。各国の国民性や社会保障制度などの違いも背景にあるので、単純に数字だけの比較は意味が―はじめに、定年後研究所について教えてください。池口 当研究所は、2018(平成30)年2月に設立された一般社団法人で、長くなる定年後の人生を豊かにするために、定年前の50代会社員のキャリア人生の充実に資する調査・研究や、学習プログラムの監修・開発などを行っています。例えば、今年2月にリリースした学習プログラム「キャリア羅針盤」は、セルフコーチング(キャリアに関する課題に取り組みながら自ら学び、気づきを得る学習)方式で、各人がマイペースで行える完全eラーニング版で開発しました。単独、あるいはオンラインによる集合研修との組み合わせなど、幅広い使い方ができるツールとして、数多くの引合いをいただいています。―池口さんご自身はこれまでどのようなキャリアを歩んでこられたのですか。池口 私は、新卒で入社した生命保険会社で、ジェネラリストとして多種の業務を経験し、ないのですが、それでも注目すべきは、日本の高齢者の労働力率が、2000年前後からさらに上昇傾向にあることです。日本の高齢者は、いまでは「定年=引退」ではなく、「元気なうちはいつまでも働きたい」と思うようになっています。「生涯現役時代」という表現も同時期に現れ、健康寿命の延伸とも相まって、「アクティブシニア」が社会に広がってきました。 しかしその一方で、高齢者を雇用する企業の人事担当者や専門家からは、「中高年社員のモチベーションの低さ」、「周囲へのマイナス影響」、「社内需給面でのだぶつき」を指摘する声が鳴りやまず、「働かないおじさん」や「残念なシニア社員」をテーマにした書籍は一つの定番になっています。企業で雇用されるシニア人材が、働く意欲はあるはずなのに、持てる能力をフルに発揮できていないのは、労働力人口減少時代では大きな損失です。―そのちぐはぐさの原因は何でしょうか。池口 65歳までの雇用確保措置が、年金支給開始年齢までのつなぎという側面が強かったために、企業側がある種の「福祉的雇用」という意識のもとで、接つぎ木のような制度をつくってしまった、ということがあるでしょう。健康寿命が延び、働くシニアは増えたがモチベーションの低さを指摘する声も※ JILPT『データブック国際労働比較2019』

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る