エルダー2021年11月号
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2021.1138戸徳川家へのお預け二. 旧幕臣全員の安全と就業の自由三. 江戸市民の安全と生活の自由 などの保証である。いままでの行動を理由に「報復的刑罰は絶対に行わない」ということを前提にしていた。 本来なら「老中」の仕事で、それに見合う年齢に達し、それが行える十二分な経験を必要とする。このときの大久保は五十一歳、勝は四十五歳だ。しかし二人とも年齢なんか気にしない。現在の人気タレントの名セリフのような〝やっちゃえ〞精神に溢れていた。 だから、 「もしも新政府軍がこれらの条件を守らなかったら?」という最悪の場合の対応策も考えていた。 人が異常な事態に遭遇すると、とんでもない大役に就かされることがある。慶応四(一八六八)年四月の、勝海舟と大久保一いち翁おう(忠ただ寛ひろ)がそうだ。幕府が消滅する前の二人は、海軍奉行や勘定奉行でまだ老ろう中じゅう※などの上役がいた。しかしこのとき大久保は会計総裁、勝は陸軍総裁のポスト(幕府は消滅しているから、最後の将軍徳川慶よし喜のぶの私的家臣として)に任ぜられた。二人とも気骨に満ちた骨太人間だから引き受けた。何をするかといえば、江戸城の無血引き渡しである。二人は「これだけは守る」という絶対条件の死守で合意していた。その条件とは、一. 旧主徳川慶喜の安全と生家水異常時は年齢を忘れさせる※ 老中…… 江戸幕府に常設された最高職。将軍に直属して政務一般をとりしきる重職[第108回][第108

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