エルダー2021年11月号
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2021.1142直近の訪問では、75歳への定年引上げ、もしくは廃止、そして75歳以降の基準該当者を80歳まで継続雇用する仕組みの整備を提案し、そのための周辺整備として、健康管理の充実と能力開発(就業意識向上)を提案したそうです。一方、古屋社長からは、さらなる取組みの充実に向け、新しいシステムを導入した先進的な事例の話が聞きたいという声があがりました。「電話で行っている出退勤時間の報告を、スマートフォンを使った新しいシステムに変更したいのですが、65歳以上の警備員の36%が、スマートフォンが使えないことがわかりました。警備業界にかぎらず、新しいシステムを導入する際の高齢社員の対応で、よい取組みがあれば採用していきたいです」一日一日、与えられた業務を全まっとうする長なが坂さか雄ゆう氏じさん(71歳)は、管制部長として事業の中枢を任されています。警備業務の開始・終了の勤怠報告にあたる上番および下番の電話応対と、翌日の現場の人員手配を行っています。手配のむずかしさは、警備員の体調や、事情を考慮しつつ、会社の利益向上に努めなくてはならない点にあります。長坂さんは管制業務※について次のように話します。「それぞれの現場がどういうものか、警備員それぞれの性格と事情がどうかを②指導警備員〈交通誘導警備2級、施設誘導警備2級、雑踏警備2級の有資格者〉、③優良警備員〈勤続6年以上〉、④一般警備員)。そのステージにより、後進を育てるための指導手当を含めた職能給を支給し、社員のモチベーション向上と定着率向上を図っています。ベテランやスキルがある警備員は、現場監督から指名で仕事が入ることが多々あります。仕事ぶりが評価されてのことではありますが、そこには課題も生じています。工事現場が休みの日でも警備員は資材の盗難防止のために見回りを行うため、工事が終わるまで休みが取りづらいのです。そこで、代行者の育成に注力しており、この代行者の存在により、有休取得率の向上につながるよう努めています。また、甲府市は全国でも特に暑くなる都市として知られており、真夏の炎天下の警備はたいへん厳しいものです。熱中症対策として、社員全員にファンで着衣内に風をめぐらせて涼感を得るファン付き作業服を配付しました。これは県内ではまだ少ない取組みだそうです。雨宮プランナーは、2013年9月に初めて同社を訪問しました。警備業という業種、そして、社員の約8割が高齢社員という実態をふまえ、さらなる継続雇用制度の円滑な運用や、より意識の高い働き方を目ざしたアドバイスを行いました。続くかぎり働き続けてくれるようなまじめで、コツコツ働く人が多いです。誠実な対応は取引先からも評価をいただいています。70歳超えのベテラン警備員の誘導で、予想では2時間の渋滞が30分で済んだと、喜ばれたことがありました。リニア中央新幹線のような長いトンネル現場の警備は、経験に裏打ちされた無駄のない誘導がものをいいます。現在の最高年齢者は84歳で、2人が在職しています。昨年、90歳まで働くことを目標にしていた警備員が、物忘れが多くなって、残念ながらあと2カ月というところで退職に至りました。警備業では高齢者が多いため、退職する原因は認知症の症状が多いです」定年70歳、希望者全員を75歳まで再雇用2017年に定年年齢を70歳に引き上げ、希望者全員を75歳まで再雇用する制度に見直しました。75歳からは1年契約の準社員に移行します。働き方は日勤と夜勤から選べ、勤務時間、日数など、身体の調子や、収入の面など希望に合うような柔軟な働き方が可能です。また、経験やスキルを評価するためのキャリアアップ制度を整備し、4段階のキャリアステージを設定しています(①指導教官〈全体の5 %〉、※  管制業務……取引先の希望に合わせて、現場に配置する警備員を手配する仕事

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