エルダー2021年11月号
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2021.1144はじめに1働く高齢者に多い労働災害として、これまで、転倒、熱中症、腰痛、切創を取り上げてきましたが、その最後として、今回は墜落・転落災害を取り上げます。墜落・転落災害は死亡災害に直結しやすいものです。また、今回は、高齢の熟練作業者を取り上げます。熟練作業者は、現場になくてはならない存在ですが、熟練作業者であっても被災します。そのなかには、熟練作業者ならではの労働災害があります。本稿では、高齢の熟練作業者の墜落・転落災害の実態を紹介し、どうすれば墜落・転落災害を防ぐことができるかを解説します。高齢の熟練作業者の安全上の課題2(1)熟練とは「熟練」とは、経験と技能の蓄積により生み出された高度で複合的な作業能力のことをいいます。単一的な作業能力であれば、若者でも習得可能ですが、高度で複合的な能力は、例えば、それは現場で起こるさまざまな問題を臨機応変に解決する力であり、経験が足りない若者に習得できるものではありません。今後、作業方法の高度化、ICT(情報通信技術)の活用などが進展しても、作業全体を俯ふ瞰かん的にとらえる必要がでてきた場合や突発的にトラブルが発生した場合など、熟練作業者に頼るところは大きいでしょう。(2)熟練作業者の安全上の課題現場の安全確保には、熟練作業者の活躍が不可欠です。ただしその一方で、熟練作業者ならではの労働災害があることを忘れてはいけませ※ 前回までの内容は、当機構ホームページでご覧になれますエルダー 高齢社員のための安全職場づくり検索 生涯現役時代を迎え、60歳、65歳を超えて、より長く活躍してもらうためには、企業が職場における安心・安全を確保し、高齢社員が働きやすい職場環境を整えることが欠かせません。本連載では、高齢者の特性を考慮した〝エイジフレンドリー〞な職場の実現方法について、職場の安全管理に詳しい高木元也先生が解説します。労働安全衛生総合研究所 高木 元也―エイジフレンドリーな職場をつくる―高齢社員のための安全職場づくり墜落・転落災害の防止―高齢の熟練作業者の安全確保―第11回

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