エルダー2021年11月号
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エルダー3のような受けとめ方をしていますか。池口 全体として「様子見」の姿勢から出ていない企業が多いものの、先駆的事例として注目すべき取組みがいくつも見られたのは、調査の大きな成果でした。例えば、自社の中高年の強みである中長期のステークホルダーや重要顧客との関係を活かした役割を付与する、再雇用後も人事評価をきちんと行い、メリハリと納得感のある処遇に結びつける、若手・中堅・シニアをワンチームとしてシナジーを追求することで、イノベーションを推進する、退職者への業務委託の導入を実験的に行う、キャリア研修を30・40代から始める、などの動きが数多く見られました。―個人へのヒアリングではどのような発見がありましたか。池口 現在も活躍している20人以上のシニアに話を聞いたところ、みなさん業種・職種もまったく異なる方々でしたが、ある種の共通点が見いだせました。多くの方が、キャリア心理学でいう「転機」を50代で迎え、乗り越えているということです。その転機はさまざまで、親の介護、役職定年、出向、早期退職勧奨、自身の病気などがあります。 何が転機における悩み・苦しみを乗り越える力となったのか。その共通項は、それまでのキャリア人生でつちかわれた「仕事を進める力(基本的なマネジメントスキル)」、「相手目線に立つコミュニケーション力」、「学び続けようとする前向きさ」、そして「家族の理解や仲間の応援」です。 それから、60代後半から70代にかけて、新しい会社組織で活き活きと活躍されている方にも、共通項がありました。さまざまな経験を積んで獲得した変化への対応力やレジリエンス(困難な状況からの心の回復力)の強さ、人と人とをつないで新しい付加価値をつくる共同チームの編成力、他者や社会的弱者をサポートしたいという援助志向、環境変化に合わせてスキルをアップデートさせ続ける意思それが従来からの年齢を軸にした人事管理と相まって、「役職定年(役割縮小で処遇ダウン)」↓「60歳定年(契約社員になり給与一律ダウン)」↓「65歳再雇用満了」というパターンが定着しています。65歳になって転職活動や居場所探しをしてもうまくいかず、55歳から65歳の間は、キャリアの面では「停滞の10年間」に陥おちいっているといわざるを得ない状況です。―池口さんは大手企業と個人へのヒアリング調査を進めてこられましたが、今回の高年齢者雇用安定法改正に対して、大手企業はど「伸びしろ」の大きい貴重な人的資源であるシニア人材の活躍支援対策の検討を

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