エルダー2021年11月号
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また、比較的近年の裁判例では、東京地裁平成6年9月29日判決において、「使用者の側からみると、前記のとおり、一般に労働者にあっては、年齢を経るにつれ、当該業種又は職種に要求される労働の適格性が逓てい減げんするにかかわらず、給与が却って逓増するところから、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化を図るために定年制の定めが必要であるという合理的理由が存するし、労働者の側からみても、定年制は、いわゆる終身雇用制と深い関連を有し、定年制が存するが故に、労働者は、使用者による解雇権の行使が恣意的になされる場合は、これが権利濫用に当たるものとして無効とされ、その身分的保障が図られているものということができ、また、若年労働者に雇用や昇進の機会を開くという面があり、一応の合理性があることを否定できない」と判断されており、定年定年制とは1定年延長を検討するにあたって、そもそもの定年制の位置づけと種類などをいったん整理しておきます。定年制とは、労働者が一定の年齢に到達することにより労働契約を終了させる制度です。就業規則または労使間の合意に基づき、労働者と使用者の労働契約の内容に組み込まれていることが通常です。定年制の合理性に関しても議論はあるものの、過去の判例では、「停年制は、(中略)人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはでき」ないと判断されたことがあります(最高裁昭和43年12月25日判決・秋北バス事件)。定年制がある場合でも、定年時期を超えて雇用を継続することは、使用者の判断または労使間の合意によって行うことが可能です。ただし、特定の従業員以外にも実施することで慣習化することがあるため、定年制を廃止する意図がない場合は、対象の基準を明確化しておくなどの判断は慎重に行うことが望ましいでしょう。A第42回 個別的な定年延長の実施、労災認定基準の改定弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。2021.1148知っておきたい労働法 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制はA& 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は&Q特定の従業員の定年を個別に延長することはできますか定年後再雇用のほかに、会社が認めた特定の従業員について定年延長を適用する取扱いは可能でしょうか。Q1

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