エルダー2021年11月号
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2021.1152再雇用制度でNPOへ出向特定非営利活動法人日本NPOセンターは、民間非営利セクターにかかわる基盤的組織として、情報交流、人材育成、調査研究、政策提言などを通じて、日本各地のNPOの基盤強化を図るとともに、企業や行政とNPOの連携・協働を促進する活動を行っている。平たくいうと、社会課題と向き合い、解決を図るため、さまざまなNPOを支援するためのNPOである。1996(平成8)年に設立され、2021(令和3)年11月に25周年を迎える。事務所は東京都千代田区大手町にあり、事務局スタッフは常勤・非常勤を合わせて19人。今回は、定年後の再雇用制度で企業から同センターへ出向し、その活動に企業でつちかった知識や経験を活かしている本田恭助さん(64歳)を紹介する。企業とNPOの連携の充実に貢献し、さらに、新たなことを学びながらフルタイムで勤務している。本田さんは2017年に花王株式会社で60歳の定年を迎え、同社の再雇用制度を使ってこの日本NPOセンターに出向している。花王では人材を「人財」と表現し、60歳定年後のシニア人財の強みを活かすための再雇用制度のなかで、社内だけでなく、NPOなどの社外組織へ出向して活躍する道を選択肢の一つとして提示している。花王が人財を出向させることでNPOなどの活動を支援するもので、本田さんの人件費は花王が負担している。「定年2年前の再雇用希望者向けの社内説明会で、当時在籍していた部署を含む社内・社外の再雇用組織の紹介がありました。そのなかの社会貢献領域として日本NPOセンターへの出向があり、『よし、これだ!』と思ったのです。公募制ですのですぐに申請したところ私が選ばれ、日本NPOセンターによる面接を経て働くことが決まりました。花王シニア人財のNPO法人への出向第1号です」(本田さん)多くの同僚が、社内での再雇用を希望していたなか、本田さんがNPOへの出向を望んだのは、持ち前のチャレンジ精神に加え、50代の数年間に故郷の父母の介護を通じて地域の多くの人に支えてもらい、定年後は地域社会に貢献したいとの思いがあったこと、さらに、保健師として自治体の地域保健で活躍する姉や福祉ボランティアをしている妹の姿を通してその思いを強くし、「思い切って飛びこみました」と当時をふり返る。 高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となるなど、生涯現役時代を迎え、就業期間の長期化が進んでいます。一方で、60歳や65歳を一区切りとし、社会貢献、あるいは自身の趣味や特技を活かした仕事に転身を考える高齢者は少なくありません。そこで本企画では、高齢者に就労の場を提供しているNPO法人を取材し、〝企業への雇用〞にこだわらない高齢者の働き方を紹介します。活動事例生涯現役で働きたい人のためのNPO法法人特定非営利活動法人 日本NPOセンター(東京都千代田区)最終回

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